あこがれ

川上未映子、あこがれ。
ピンクは好きじゃないけど。
金色で書かれたタイトルは、魅力的だよね。
なんか、大事にしなきゃいけない感じがするもの。

実は、川上未映子の作品は、初めて読みました。
コテコテの関西弁の使い手ってことは知ってて、いきなりまくしたてられたら困るなーとか思って、ちょっとパンチの弱そうなものから手にとってみたのでした。

第一章と第二章があるんだけど、特に第一章が好きだったよ。書き始めからよかった。唐突さは、この人の一つの武器なのかもしれない。
学校からの帰り道、毎日のように歩数数えてた私からすると、とっても親しい感覚。4年生の麦くんの気持ちがよくわかってしまってびっくりしました。
次々と世の中の出来事に疑問が浮かんできて、ぐるぐる考えてしまって、なんにも解決しないまま過ぎてゆくような日々です。

「僕はおばあちゃんの顔のしわのかたちをみながら、頬骨の形をみながら、そして目をじっとみつめながら、これらのいったいどこにおばあちゃんの気持ちがあって、それがどうやってぼくにわかるんだろうと、いつも不思議な気持ちになる。」

「ぼくにもう一度、へガティーにそのことを謝ったり、あるいは説明をしなおす機会はあるだろうか。ないだろうな。こういうのって、どんどんなかったことになってゆくんだ。」

文章のテンポ、とてもよい。ぐわって掴んでくかんじある。次々に移り変わっていく心の動きが見えるような文章だ。
それに、ミス·アイスサンドイッチは最高だった。

第一章と第二章。4年生と6年生。
6年生になってからは、絶妙な具合でふたりが成長してることがわかるのすごい。
「付き合う」ことが、逃げ出したくなるような感覚だったときのことも、思い出したりした。

二章はねー、ちょっと思い込みの激しい女の子の率直な意見がおもしろいとこもあった。

「二回目の結婚とか、ふたりめの子どもなんていうのは、そんなのは、まったく嘘なものなのに。」

「来年は、再来年は、もっと人がふえて、もっともっといろんな人がいろんなことを言うようになって、そして、うまく答えられないことばっかりになって、どうしようもない難しいことが、これからどんどんふえていくんだろうか。」
「でもさ、こっちも強くなるからさ。こっちもただ困ってるだけじゃなくなるし、黙ってるだけじゃなくなるし、なんていうのか、動けるようになるからさ。」

「お母さんだけがもういなくて、お母さんだけがこの世界のどこにもいなくて、お母さんだけがいないんだ。」
「お母さん、わたしは、思い出せることがないのに、お母さんを思い出すと涙が出ます。思い出せないのに、お母さん、と思います。」


大人になるということは、自分の力で嫌じゃない場所にさっと動けるようになるということっていう考え、好きかもしれない。
そのために、世界はこんなに広いんだと思う。