クリスマスツリーを伐りに行った日
私には、たった一度だけ、クリスマスをアメリカで過ごした経験があります。
高校一年生のころ。8月からアメリカのペンシルベニア州に10カ月間の留学をしている期間のできごとでした。
毎年、クリスマスが来るたびに、思い出されるいくつもの忘れがたい場面のうち、そのひとつを書いてみようと思いました。
クリスマスツリーをみんなで伐りに行った日のこと。
12月に入ってすぐの土曜日。私のアメリカの両親であるDaveとKeara,そしてちびっこ3人衆と私、6人で出かけた先は、クリスマスツリー農園。
アメリカには、クリスマスツリー用のモミの木を育てるだだっぴろい農園があって、毎年アメリカのファミリー達は何百本の中からお気に入りのツリーを選び出すのです。
私たちもその日、朝早くに家を出て、車で1時間くらいかけて農園にたどりついて。
クリスマスソングとか、みんなで口ずさみながら、ぐるぐる木と木の間を歩き回って。
おうちにぴったりの大きさと美しい形や色を兼ね備えたツリーを見つけだすというミッションに挑んだのです。
”I like this one!” ”No, this one is better!" "How about this?" "Maybe it`s too big..."
とかいいながらね。
ニット帽とアウター姿でむくむくに着込んだ天使みたいなちびっこたちと手をつなぎながら、雪をかぶったモミの木々の中を永遠に歩き回って素敵な一本の木の前にたどり着いたとき、その時のことを、よく覚えているのです。4メートルほどもある美しい木を見つけて、4歳の host brother Judah が興奮して目をくりくりさせながら雪の上をジャンプしていたこと。5歳のhost sister Noraがモミの葉っぱに触れていたこと。Daveがにやりと笑ったこと。KearaがYaaayと叫んでいたこと。寒さで皆の顔が赤く上気していたこと。私は、なんだか嬉しくなって、2歳のColletteの手をぎゅっとにぎっていました。
そんな映画みたいな一場面が、脳裏に焼き付いているのです。
アメリカで過ごしたクリスマスには、そんな素敵な場面が各所ににちりばめられていて、そんな思い出のひとつひとつが今の私にとっては贈り物です。
ちなみに、選んだツリーは、きちんと農園のひとが伐って車でおうちまで運んでくれるのね。そして、飾りとライトでクリスマス期間の間、おうちをあたたかく華やげてくれたあと、裏庭で薪にされて、薪ストーブなんかに使われるんですよ。
「There`s nothing sadder in this world than to awake Christmas morning and not be a child.」(Erma Bombeck)