犬も食わない

尾崎世界観と千早茜による連作。 冷静と情熱の間みたいだけど、もっと庶民的で、退廃的ね。 ちょっと暴走気味なところもあるけれど、2人の文章がベースで似ていて、見分けるのが難しいと思った。切れるときのポイントとかも、なんだか相性がいい。 ありえな…

恋の幽霊

この人の分かりづらい文章が、どうしようもなく好きだ。自分の感性に響いてしまう。 人が人を思う気持ちの繊細さとか、変幻性とか、すくい上げてくれる。 読みやすさが、読者に対する目みたいなものが薄くて、とにかく自意識というか、主観だから好きなのか…

モモ100%

これはとっても先鋭的。すごいなあ。 星野、めっちゃ好きになったな。 生き残り方だけを必死に探ってるかんじ、中学とか高校時代を思い出した。 「簡易瞬間接着剤的な恋愛」 「るんるんで胸を切り裂いて、そのなかにラブを置いて、また左胸を縫った。私はそ…

シェニール織とか黄肉のメロンとか

シェニール織ていうんだって、知らなかった。私も持ってたハンカチの柄。 読む前から、信頼している著者。 年齢に応じた登場人物を書くかんじが少し憎らしいのだけど。最近の現代的な話題を織り交ぜていて、ああ新刊なんだって嬉しくなった。 理枝の性格が魅…

世界はうつくしいと

長田弘の詩集。 読んでると心が落ち着く。 大切なことを見失わないようにしたい。 ミミズクのような目をもつことができたらというのが、変わらない著者の夢だという。 「暮らしに栄誉はいらない。空の見える窓があればいい」 「世界を、過剰な色彩で覆っては…

グランドホテルブダペスト

非常に良い映画だった。 なんといっても、セットがかわいい。おとぎ話みたい。色の使い方がすごく好み。 そして、グスタヴのキャラクターが愛おしい。超一流。とっても早口。でも好色。 監獄の衣装が最高だった。 サスペンス的なのにコメディで、師弟愛がと…

彗星交叉点

穂村弘のエッセイ、読んでないの、まだあったんだ!って、それだけで嬉しい。 普段の生活で気になった言葉とか、違和感とか、書き留めるようにしようと思った。 そういうところに、新しい発見がたくさん待ってるはずだって、信じさせてくれる。 こんなことが…

葉っぱ

久しぶりの、銀色夏生。 写真と言葉の組み合わせが、無限でランダム。 葉っぱのひとつひとつや小鳥のひとつひとつの羽の色の違いまで、見つけられる生き方がしたいと思う気持ちがあるよ。 「希望をもつということは私にも許されたただひとつの愛の告白」 「…

硝子の塔の殺人

これはすごいなー、なんだか圧倒された。綾辻行人の十角館の殺人、とても好きだった身からしたら、著者のミステリーへの熱量に尊敬の念を抱いた。 これまでにあったトリックの豊富さとか、ミステリの歴史とか、そういうものまで踏まえちゃってなんて読みやす…

むらさきのスカートの女

淡々とした語り口の中に潜む狂気が、だんだんと明るみになっていくまでの、手腕がすごい。 気づいたら、ずいぶん遠いところまで来てしまったな、というかんじ。 日常に突如として現れる悪意は、いつもこんなかんじで、あまりに突拍子もないから、いつの間に…

さっきまでは薔薇だったぼく

最果タヒの詩集。 この人の著作、見かけるとつい手に取ってしまう。 小さなきらきら、鋭い画鋲みたいな一貫したなにかがある。 恋とか、優しさとか。わからなくなってしまう。 「春の、川の上に、光を凍らせて、削ってできた粒を撒いていく仕事をしています…

黄色い家

さすが、川上未映子。おもしろかった。 成長するにつれて、見えてる景色が変わっていくこと。異常に気づかないままおとなになること。 詐欺の裏側なんかも、細かく描かれていて興味深かった。 「このさき、自分がどこで生きることになっても、何歳になっても…

ハンチバック

読みたいと思ってた芥川賞作品。 パンチがあるなあ。 力強すぎてユーモアになるの、すごいなあ。 主人公の目線から見ると、いろいろなことの価値が反転していく感覚がおもしろかった。 生きるために、壊れていく。妊娠して、中絶する。金が、摩擦を遠ざける。

奥の細道

さらっと読んでみたりした。 松島とか、平泉とか、行ったことあるところが出てくると嬉しいし。 旅行記と見せかけて、フィクションなんだな。昔は、命がけの旅立ったんだな。 最近、仏教の教えが自分の中にも根付いてること、わかってしまう。 芭蕉の俳句の…

アイデン&ティティ

映画見ました。 峯田くんが主人公だったとは。情けないけど憎めない。 歌、少し外して歌ってるのかな。 麻生久美子が女神みたいだった。セリフが哲学的でおもしろい。 私のことマザーだと思ってるでしょ、とか、仕方なく好きになったの、とか、いいわよ、と…

ハチミツとクローバー

世界でいちばん好きなマンガ。 自分の中では、本当に完璧で、すべてが刺さるバイブルだなあ。 タイトルも登場人物も舞台もテーマも絵も言葉もユーモアも巻数も全部全部いい。 羽海野チカ先生の絵がかわいくてかわいくて、きれいで、切なくて。 家に全巻そろ…

バカの壁

養老孟司の代表作。 今更感がありますが、読んでみました。 時々表現に引っかかりを覚えるけど、なるほど、と思うことも多かった。 情報は不変、人間は変化するのに、今はあべこべ状態になってる、というのはわかる感覚。政治家が嘘つきにしか思えないから、…

日記(2024年3月)

窓の外で、雪が降ったり止んだりする。 たった一人の事務所を思い出す。 ベーグル屋さんにバイバイ。 こたつで寝てしまう。油断によって失敗は繰り返される。 携帯手放すのは難しい。つい手にとって、誰かの感触を求めてしまう。 もう2度と来ないかもしれな…

不適切にもほどがある

楽しかったー。 こんなにくだらなくてワクワクさせてくれるのはやっぱりクドカンドラマなんだ。 キャストもいつも素晴らしいし、謎にミュージカルでおもしろいし。 河合優実と磯村勇斗が特に好きだった。阿部サダヲも最高にはまり役。れなあも出てて嬉しかっ…

誰が国語を殺すのか

国語力の大切さを、説得力を持って訴えたルポ。 公立小学校の現状は深刻だ。 言葉でコミュニケーションがとれないと、他者との関係に、喜びだって見いだせないかも。 ネットやゲームの世界で飛び交う暴力的な言葉だけで生きていく子どもたちがたくさんいるこ…

blue giant

映画を見ました。 blue giantって言葉、かっこいいな。 映像がとにかく綺麗で、素敵だった。 全体的に蒼く描かれる東京の街。 特に演奏の場面は、伝え方の発想が自由で、エネルギーが爆発してて、ワクワクして、めくるめくかんじがとてもよかったです。 宝石…

鉄コン筋クリート

松本大洋のマンガ。 シロとクロと宝町。 なんだろう、この人のマンガは奥行きがすごいけど、でもギャグマンガかな。 シロの純粋さと、素朴な疑問がとっても刺さった。 悪魔に取り憑かれたみたいなクロの迫力もすごい。素早いクロの動きが、私には見えてた。 …

月と散文

私は又吉直樹という人が大好きなので、エッセイが楽しい。 表紙、松本大洋なんだ。とてもいいな。 自分の中で、無限に会話できる感覚、楽しいな。 好きなこと、やったほうがいいって、思わせてくれる。 考えすぎって言われても、考えることをやめられない。…

テストカトリポカ

表紙の絵がとてもかっこいい。 本格的な裏社会もの、というような小説は、これまであんまり読んでこなかったかもしれない。 日本にいる南米や中米の人たちのことも。 メキシコのアステカ文明や、心臓外科医が、暴力団の関係、意外性のある組み合わせと縦横無…

パレード

吉田修一の傑作だ。ポップな作品かと思いきや、怒り、に通ずるこわさがある。 登場人物たちの、圧倒的存在感、というか、絶妙にリアルなかんじがとても良い。 軽い感じのやりとりも心地良い。 だけど、みんな、どこか、狂ってる。 誰もが、どこか、演じてる…

ゲームの王国

小川哲のエンタメ小説。 上下巻あるし、やっぱり理屈っぽいけど、壮大でこの人にしか書けない物語。 哲学と科学、どっちもすごい。歴史も、神話も、物理も、政治も。 無数のアイディアが散りばめられてるような。くじ引き、のtvショーとかもありそうだし。…

荒地の家族

芥川賞受賞作ですね。 とても静かで、寂しくて、なにもない小説。 東北の、口下手な中年の男の人が背負ってるもの、見せてもらった気がした。 主人公の見てる景色やこれまでの人生がが、ぼんやりとした情景として、目に浮かぶ。 「元の生活に戻りたいと人が…

ほかならぬ人へ

とても恋愛小説のイメージが強い著者。 直木賞受賞作なんだな。 どうしても、この人じゃなきゃだめなんだって、思える人がいるの、なんだか羨ましいような気がする。 自分では、どうにもならないのが恋愛かな。 未来の自分が今の自分を裏切るって感覚、よく…

田村はまだか

ゴトーを待ちわびて、的なかんじなのかな。 最初の1行で朝倉かすみだな、とわかる。 ユーモアもあって、少し感動もある。 短編集というかんじだから、長編また読んでみたいです。 「「チャオ」は、「おはよう」「こんにちは」「さようなら」などを兼ねる挨拶…

君たちに明日はない

とってもドラマ化しやすそうな小説だなあと思った。 首切りプロ集団という設定が斬新。 ポップでフラットで時に辛辣な文章が心地よいです。 今とは少し時代が違うけれど、仕事の中で生まれる不協和音がリアルで、こういう人いるなーってなりました。 「世の…