くもをさがす

西加奈子の言葉には、やっぱり魂が乗ってる感じがする。

カナダ人には愛があって、日本人には情があるって言葉、めちゃくちゃ的を得ていると思った。

日本は狭くて深くて、情がある。

美しい瞬間は、自分だけのものでいいって感覚も、すごくよくわかるよ。伝わらないって思ってしまう。

例えば、自分が癌になっても。大好きな人たちに、ちゃんと頼って生きていきたいなと思う。

苦しさを、分け合ってくれる人が、そばにいてくれたらいいなと思う。

ひたむきに、書くこと生きることに向き合ってたら、きっと周りに素敵な人が集まってくる。西加奈子さんは、そう信じられるような生き方をしている人だと思う。

ナミビアの砂漠

河合優実の演技が圧巻だった。

スタイルがめちゃくちゃかっこいい。すごくいろんな表情が見られておもしろかった。

全体に漂う退廃的な空気、閉塞感、葛藤感と、エネルギーの爆発力みたいなのがあっていいなと思った。

躁鬱的な映画かもしれない。カウンセラーの癒し感がよかった。

カナのキレる演技とかが天才的。ケンカが見ものだし、だんだんと壊れていく感じが痛々しいけど迫力ある。

二人の彼氏も適役で、良い男たちにだんだんと尽くさせるなんとも言えない色気や魅力がある主人公だ。クセになる、というか、目が離せないというか。

2人目のところに同居した途端、男が虫を叩いてる不穏感が印象深い。

カナを取り巻く人たちとの距離感、温度感も冷めてておもしろい。

いつもどこか話半分で、適当に合わせたりして本当の気持ちを押し殺したりしてみるけどやっぱりだめで爆発して、でもどこにも行くところがなくて、あがいてる感じが今の時代の空気感を鋭く映し出してると思った。

こちらあみこ

カメラが、子どもの目のように細部を捉えていておもしろかった。

人の気持ちを上手く想像することのできないあみこが、意図せずして周りの人たちをいらつかせ、傷つけていく様子がよく描かれている。

主人公のあみこの存在感が圧倒的で、適役だ。気持ち悪いとこ、いっぱいあるけど、鼻歌とか裸足とか、気持ちもわかる。

動きも言葉も、見てるだけでおもしろい。

弟じゃなくて妹だってわかった時、いつも、みんな秘密にするんよな、ってつぶやいたとこ、刺さった。

本人は、なんでだろう、って思うよね。あみこの頭の中、なんでだろう、であふれているのじゃないかな。

クラスのいたずら坊主との友情、なんか良かったね。

保健室の先生とか、たまには馬の合う人もいるんだけどね。

家族でいても、幸せな時は、あったんだけどね。

お兄ちゃんの不良への豹変が鮮やかだった。

映画だから、ずっと見ていられる。だけど、こういう子が生きていく時、その人生は孤独になりがちかもしれない。

家族や友だちが、彼女を遠ざけていったように。

愛の不時着

やっと見終わったー長かったー。

出会ったり別れたり出会ったり別れたり、よくもまあこんなにドラマティックに仕上げられるものだと半分呆れてるのに、毎回まんまと涙を流してしまう。

登場人物一人一人のキャラが見事に立ってるから、どんどん引き込まれてしまうのだ。

特に、村のおばさんたちと中隊長の部下たちのかわいいことかわいいこと。

クスンジュンとソダンの2人も泣けた。

ダンのお母さんも迫力すごくて最高。

思ったよりもコメディで、笑える場面がめちゃくちゃあって好き。北と南の文化の違いもわかっておもしろいなあ。

中隊長の模範市民ぶりがすごい。

あと、チョチョルガンは、めちゃくちゃ善人顔だから、悪役としてのギャップで凄みがまして怖かった。

名場面がたくさん。

やっぱり、孤独にはなるな、のところとかよかったな。

これ一本で、一生分の韓ドラを見終えた気分になりました。

 

ルパン三世 カリオストロの城

ルパンは軽やかで、見てて楽しい!

絶対シリアスにならない安心感があるね。

絵がきれいだけど、ジブリよりポップなところもたくさんある感じがするなあ。

不二子ちゃん、リポーターしながらみんなをぶっ飛ばしてくところ好き。

お姫様、ナウシカに似てて好き。

手品でお花とか出されてみたいね。

怖いから、俺、寝る。っていうところ好き。

銭形警部、相変わらずルパンを捕まえるチャンス逃しすぎてるの好き。

 

存在のすべてを

塩田武士の作品、初めて読みました。とても良い作品だった。

記者と写実画家、職業は違えど、存在、実在を書こうとする思い。

生きていたことの凄みを感じられる作品。

芸術に完成はなくて、諦めがあるだけ、とか、不可能だから信じられる、とか。

それから、二児同時誘拐事件のアイディアや、警察、記者の内部事情が驚くほど緻密に描かれていて驚いた。

誘拐事件の現在進行系の調査の場面は、緊迫感があって、読み応え抜群で。

身代金の回収、子どもの生存、犯人の逮捕。優先順位を見間違わずに現場を上手く裁ける警察官は、恐らく減っているだろうな。

人と人とのつながりを温かく描いている後半とはギャップがあって引き込まれる。

「いつもそうだ。安堵した後、自分にもその資格がないような気がして寂しくなる」

「この雪景色ってさ、何もしてないのにきれいだろ? 美しいものはありのままできれいなんだよ。美しく見せようと意識すると、もう何でもなくなっちゃう」

「目を閉じてもその絵が浮かんでくる。お父さんは残像のある絵を描きたいんだ」

「これから世の中がもっと便利になって、楽ちんになる。そうすると、わざわざ行ったり触ったりしなくても、何でも自分の思い通りになると勘違いする人が増えると思うんだ。だからこそ「存在」が大事なんだ。世界から「存在」がうしなわれていくとき、必ず写実の絵が求められる。それは絵の話だけじゃなくて、考え方、生き方の問題だから」

「これまでは、好きな人と結ばれることが幸せだと思ってきた。でも、今は違う。忘れられないほど好きな人、どんな道を歩もうともずっと太陽のように自分の心を照らしてくれる、そんな人と巡り会えることが、本当の幸せなのだと気づいた」

アンタッチャブル

有名なベビーカーのシーンが見ものだった。西部劇みたいなアクションもあったしね。

禁酒法をめぐる話だったなんて知らなかったな。

その他も、相棒がまさか本当に殺されてしまうなんて、思わなかった。

さすがロバート・デ・ニーロがマフィア役を演じているだけあって、迫力があったし、手強かった。

警察学校の首席がイタリア人だったところもおもしろかった。ぺぺリ。

裁判の逆転劇も含めて、よくできた王道映画はという感じがしました。