こんな方がいるんだなあと思って手にとってみました。
ずっと生きていくことを前提にした社会の仕組みに耐えられない気持ち、誰もが抱えているんじゃないかと思う。
「朝の道「おはよ!元気?」と尋ねられもう嘘をついた 四月一日」
「音もなく涙を流す我がいて授業は進む次は25ページ」
「就職は数十年後も生きていて働きますと交わす約束」
「目を伏せて空へのびゆくキリンの子 月の光はかあさんのいろ」
「帰りたい場所を思えり居場所とはあの日の白い精神病棟」
「みわけかたおしえてほしい 詐欺にあい知的障害持つ人は訊く」
「振り向かず前だけを見る参観日一人で生きていくということ」
「あおぞらが、妙に、乾いて、紫陽花が、路に、あざやか なんで死んだの」
「止むを得ず自衛のためと少しずつ戦車の向きがずらされていく」
「泣き叫び連れ出されていく入居者を「またか」と思う 慣れたふりして」
「君が轢かれた線路にも降る牡丹雪「今夜は積もる」と誰かが話す」
「私ではない女の子がふいに来て同じ体の中に居座る」