自転しながら公転する

初めて読んだ作家さん。直木賞作家なんだ。

結構長いけど、読み応えある作品でした。

物語のなかでも、一人の人間の価値観が揺れ動いていく様を見事に書ききっていてすごい。

中卒ヤンキーという偏見から、自分もまわりも抜け出そうともがく描写が上手だった。

仕事も恋愛も、上手くいかないことの積み重ね方が、辛抱強いと思った。

自分が遊んでいるとき、身内に顔向けできないで、何もしていない幼稚な人間だと責めてしまう気持ちも、よくわかる。何でも、長いこと上手くはいかないことも。

 

「服には、その服を着る必然性がいる。もし、素敵な服が好きでそれが着たいのならば、そういう服を着る必要のある生活をするしかない。」

「何を期待されて、それにどう応えるか。何を主張したいか、主張を声高にしたいのか匂わせる程度にしたいのか。そういうことを表現するのが、都にとっての「着る」ということだ。」

「配偶者の死の影は、親のそれとはまったくの別物だった。自分の土台を容赦なく崩されるような衝撃だった。」

「私はほんとにクズだ!と、突然叫ぶように思った。幼稚すぎる。話にならない。」

何かに拘れば拘るほど、人は心が狭くなっていく。」

「甘えていいと言われるのは、甘えるなと言われるよりきつかった。」

「理解できない貫一を、理解したかった。」

「明日死んでも百年生きても、触れたいのは彼だけだった。」