久しぶりに、挫折した。
黒田夏子のabさんご、わからなすぎて、最後まで文字を追うことすらできなかった。
こんなこと、しばらくなかったのに。完敗。
タミエシリーズの毬と、タミエの花と、虹はおもしろく読めたけれど。
文学でしかすくいあげられないようなこと、だと思った。
「タミエは、毬を、新しい裂けていない毬を手に入れようと心に決めたが、タミエが無一文であるからには、手に入れるということは買うこととは違うことだった。」
「タミエの嘘はばれたことがないし、もしばれたら大人が本気になって怒るような、可愛げのない周到な嘘であった。」
「一つは友だちや大人たちが規則と習慣に従って勉強や掃除や洗濯や商いで忙しくしている間、タミエひとりは山の上で、気儘に好き勝手しているということの、もう一つは純粋にそのこと自体の歓び、即ち、すがすがとかぐわしいものたちに埋もれて、人の知らないかたちを視ることの、つまり、あの花に出遭うというような奇端によってタミエが引き揚げられる、ほこらかな戦き。」
「全く、海は碧いなどという嘘を、誰が考え出したものだろう。」
「虹を、もう一度忘れてしまえるものならば。」