おいしいごはんが食べられますように

これは、傑作だ。

高瀬さんは、淡々と、けっこう恐ろしいことを書いていく。

言いたいのに、言えないことが、見事に言語化されている。

職場って、どこもきっと歪なんだろうな。

誰が悪いとか、そういうの、みる視点によって変わってしまうし、表面に出てきているものと出てきていないものもあるし、本当にわからないんだ。

 

「っていうか、できないことを周りが理解しているところが、ですかね」

「芦川さんみたいな人たちは、手軽に簡単、時短レシピ、という言葉を並べながら、でも、食に向き合う時間は強要してくる。」

「誰でもみんな自分の働き方が正しいと思ってるんだよね」「無理せず帰る人も、人一倍頑張る人も、残業しない人もたくさんする人も」

「体調が悪いなら帰るべきで、元気な人が仕事をすればいいと言うけれど、それって限られた回数で、お互いさまの時だけ頷けるルールのはずだ」

「途中でやめるのが、苦手なんですよね。やめるって言ってばたばた、するのとか、まわりの反応とか、考えるほうがしんどい」

「食べ始めの一口で美味しいとまず言い、半分ほど食べたところでえーこのソースってどうやって作ってるんですかと興味のないことを聞き、全て食べ終えたらあーおいしかった、ごちそうさまと殊更に満足げに聞こえるように宣言しなければならない」

「なるべくちゃんとしてない、体に悪いものだけが、おれを温められる」

「正しいか正しくないかの勝負に見せかけた、強いか弱いかを比べる戦いだった。当然、弱いほうが勝った。」