さくら

西加奈子の初期の小説。西加奈子の作品読んだ中で、今まででいちばんよかった。

3人兄弟の神々しさが、文章全体から伝わってきて。

狙いうちみたいに、どーんと感情が言葉の波に持っていかれる。

こどもが生まれたら、「なんで空が青いのか、」一緒に空をみながら考えられる母親になる。自分に約束する。

あとがきの、「私は全力で尻尾を振ろうと思う」という一言が、西加奈子という人柄をぎゅっと押し込めてると思った。

 

「この世にあるものは全部誰かのもので、全部誰のものでもない。」

「そのときがくるまで、僕らはいっしょうけんめい花を見よう、匂いを嗅ごう、妹を可愛がろう。」

「小さな、小さな街だった。ああでももう、雨で見えなくなった。」

「十五年しか生きていまいが、三十六年生きていようが、人を恋することに力の高低は無く、僕は娘の幸せより何より自分の恋を取る矢嶋さんのお母さんや、十五歳の、その心の全部をぶつけて愛し合っている兄ちゃんと矢嶋さんを思うと、息が出来なかった。十三歳、とても寒い冬だった。」

「嘘をつくときは、あんたらも、愛のある嘘をつきなさい。騙してやろうとか、そんな嘘やなしに、自分も苦しい、愛のある、嘘をつきなさいね。」

「時は、乱暴だった小さな女の子を、兄ちゃんの後ばかりくっついていた僕を、何か複雑で、手に負えないものに変えて行く。」

「僕のそれが何かごつごつと岩場の多い灼熱の星の言葉だとしたら、ミキのそれは、透明な水が流れていて、見たことも無いような美しい花や木が生い茂っている、そんな豊かな星の言葉みたいだった。」

「う、打たれへんよ。」

「ああそれで僕は、何もかも分かってしまった。」

「ミキの恋は圧倒的で、かけねがなくて、恐ろしいくらい優しかった。」

「ああ神様はまた、僕らに悪送球をしかけてきた。」