桜前線開架宣言

たくさんの歌人の作風を知ることができるとても良い本で、とにかく山田航の解説がすばらしい。

お気に入りの歌人がみつかると楽しいね。

自分の好きなことばの並びが分かりやすいな。

けっこう前の本だから、新進気鋭シリーズとかも入ってくる続編が読みたいな。

きまりがあるから、競技性のようなものがあってかっこいい。

 

大松達友 

「どうしても京大に行く。その他に母と離れる方法はない。」

松村正直

「忘れ物しても取りには戻らない言い残した言葉も言いに行かない」

「それ以上言わない人とそれ以上聞かない僕に静かに雪は」

しんくわ

「元卓球部 現生徒会長木戸健太が毎日部室に来るので困る」

野志

「いけないことはみんな本から教わったひとつの書架として君を抱く」

雪舟えま

「人類へある朝傘が降ってきてみんなとっても似合っているわ」

「もう歌は出尽くし僕ら透きとおり宇宙の風に湯ざめしていく」

「セックスをするたび水に沈む町があるんだ君はわからなくても」

兵庫ユカ

「どの犬も目を合わせないこれまでもすきなだけではだめだったから」

「まよなかのメロンは苦い さみしさを言葉にすれば暴力となる」

「すきという嘘はつかない裸足でも裸でもこの孤塁を守る」

「でもこれはわたしの喉だ赤いけど痛いかどうかはじぶんで決める」

内山晶太

「かけがえのなさになりたいあるときはたんぽぽの花を揺らしたりして」

「ひよこ鑑定士という選択肢ひらめきて夜の国道を考えあるく」

石川美南

「犯人の好物はパフェ 線密なる調査ののちにわかった話」

岡野大嗣

「きれいな言葉を使ってきれいにしたような町できれいにぼくは育った」

「兄さんへ 高く飛んでも人生は変わらなかった じゃあね(ルイージ)」

永井祐

「月を見つけて月いいよねと君が言う  ぼくはこっちだからじゃあねまたね」

「元気でねと本気で言ったらその言葉が届いた感じに笑ってくれた」

「会わなくても元気だったらいいけどな 水たまり雨粒でいそがしい」

「ぼくの人生はおもしろい 18時半から1時間のお花見」

笹井宏之

「えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力を下さい」

「みんなさかな、みんな責任感、みんな再結成されたバンドのドラム」

「だまし絵に騙されあっていましたね でたらめにうつくしかった日々」

「ひきつづき私は私であるでしょう ところによりあなたをともなって」

加藤千恵

「いつどこで誰といたってあたしだけ2センチくらい浮いてる気がする」

「そんなわけないけどあたしじぶんだけはずっと16だと思ってた」

「雨に似た言葉を持った人だった 字を丁寧に書く人だった」

「わたしたちは甘やかされて育てられてろくな傷つきかたも知らない」

「「わけもなく悲しくなる」の項目に丸をつけてる性格テスト」

堂園昌彦

「泣く理由聞けばはるかな草原に花咲くと言うひたすらに言う」

「君は君のうつくしい胸にしまわれた機械で駆動する観覧車」

「美しさのことを言えって冬の日の輝く針を差し出している」

「冬に泣き春に泣き止むその間の彼女の日々は花びらのよう」

「出会いからずっと心に広がってきた夕焼けを言葉に還す」

平岡直子

三越のライオンみつけられなくて悲しいだった 悲しいだった」

望月裕二郎

「さかみちを全速力でかけおりてうちについたら幕府をひらく」

「つり革に光る歴史よ全員で一度死のうか満員電車」

野口あや子

「アクリルの白いコートを汚す雨 好きってそういう意味じゃなかった」

「こいびとの言葉借りればあや子ってひとは最高らしいくるしい」

「頑張ってる女の子とか辛いからわたしはマカロンみたいに生きる」

木下龍也

「戦場を覆う大きな手はなくて君は小さな手で目を覆う」

「そういえばいろいろ捨ててあきらめて私を生んでくれてありがとう」

ペンネーム佐藤大好きさんからのお便りですが黙殺します」

大森静佳

「あとがきのように寂しいひつじ雲見上げてきみのそばにいる夏」

藪内亮輔

「みんな死ねそしてゆたかによみがえる花を小さく胸に咲かせろ」

「夕焼けがひろがり尽くすあの部屋で知つたね、愛は愛を殺すと」

アスファルトに複雑な雨 言葉など人など捨ててしまへればいい」

「するどかつたね、一日一日が。そしてそのなかにまっすぐ降る春の陽が」

「なかゆびを立ててゆき降る窓をみるそのやうにしてあいしてゐた何もかも」