ハネムーン

吉本ばななの真骨頂みたいな小説だ。

丁寧で、ゆっくりで、力強い。

庭でぼーっとするところとか、自分に重なるところがあって驚いてしまう。

かけがえのない人に、正しい時に、正しいことをしてあげられる人間でありたいと思う。

自分も、弱ったときに、正しい助けの呼び方をしないとだなあと思いました。

人生には、なにがなんでも、決断しないといけない時がある。それは、とてもわかるような気がしました。

 

「きっと裕志の心の窓から見える景色は、私よりもはるかに淋しい、と私はよく思った。いくら手をつないでみても、抱きしめても、その窓の景色だけは変えることができない。」

「正しい時に、正しいことをしたような感じがした。」

「あの時、私と裕志とオリーブと、庭は、なにかとても美しい、花火のようなことを世界に示して、世界が私たちのほうに恋をしたのだと、私はそう思う。」

「私が、あんな温かそうな所に住んでいるなんて、と不思議に思った。」

「裕志の悲しみはたとえ本人にそのつもりがなくても私のハートを凍らせるような重さと冷たさを持っていた。」

「人生には時々、その人が望んでいるなら、と涼しい顔をしているわけにはいかないことがあるのかもしれない。勘としかいいようのないなにかのために、必死になったり自分が心もとなくなっても、わけのわからない、後にならなければわからない動きをなにがなんでもしたほうがいいこともあるのかもしれない。」

「泣くのは苦しいし、体力を使う。吐くのととてもよく似ている。」

「そうしたら、ある朝、おとぎばなしの中の精霊が持ってきたみたいに、窓辺に小さな雑草の花束が置いてあった。」

「この世はとても広く、すごくたくさんの可能性があるような感じがした。」

「今という状況の重みを適当に解き放てれば、たいていのことは楽しいと思える。未来の見たこともない状況の画面を想像するよりも、今の光線のほうが美しくて強かった。いつもそうだった。」

「世界は私がどうなろうとなんとも思っていないけれど、世界は面白くて美しくて愛情みたいなものにあふれていて、なにがあるかわからなくなって、その中で泳いでいる私は全然かわいそうなんかじゃない、と思ったの。」