小川哲の賢さがあふれている。
やっぱり、珠玉のエンターテイメントの創り手、というかんじがするのだけど、この作品には、カルチャーへの愛みたいなものが詰まっててよかった。
短編集だけど、読み応えばっちり。
時を超えて届くものがあるって、思わせてくれる、楽しくて知的な物語たち。筆者の実力者ぶりがすごい。
「しかし、そうやって半ば暴力的に規範となる文化を取り入れることによって、それまで見えていなかったものが見えてくるのだ。なんとなくカッコ良さそうだからという理由で、理解できないフランス映画を観る。賢く見られたいからという理由で、ニーチェやマルクスやピケティを読む。人気だからという理由で、日本画やモダンアートの展覧会へ行く。そうやって、人々は本来興味のなかったものに興味を持つ」