パリの砂漠、東京の蜃気楼

窓から遠ざかることを最優先に生きてきた筆者。最後のところが心に残る。

理由もなくずっと苦しいこと。どうしてこれまでやってこれたんだろうと思うこと。

それでも、生きていくこと。

日本という国の抑圧も、よく分かる。だけど、母国なんだ。

 

「今日は何だか月にいるみたい」

「いつの間にかあちこちに散り散りになっていた心と体は、その時きちんと重なっているだろうか。」

「目を閉じて浮かぶものと、今目を開けてそこにあるものの差が耐え難い。ここにいたくないのにここにいる。一緒にいたい人と目の前にいる人が違う。望んでいる世界と今いる世界が遠く離れている。」

「自分にも他人にもどれだけ不誠実な存在だろう」

「生きているだけで、何かに何かの感情を持っただけで、何かに傷つき、何かを傷つけてしまうその世界自体が、もはや私には許容し難い。」

「ここで生きていくために必死になっていた自分を、ここを出ていく自分が嘲笑しているような気がした。」

「でも先の見えない憂鬱と絶望的な本音を今のアンナに吐露するのは、きっと彼女にとっても私にとっても酷なはずだった。」

「あなたはいつも本当に言いたいことを言わない」

「死ぬまで誰も傷つけたくない。誰の心も体も、傷つけたくない。そう思っていた。」

「フランスの男性には感じなかった、日本の男性の高圧的な態度。」

「結局私も、テレビ番組でパワハラセクハラをされても笑ってやり過ごした女性たちと同じで、彼らの土俵に「立ってやるか」と笑ってやり過ごす女なのだ。そうだだから、私は彼女たちを見て死にたくなるのだ。」

「どうやったって、この人生の中で信じることと書くことから逃げることはできない。」

「全部空のせい、そう思えたら、ある種の割り切りと、感情や衝動に身を委ねられるようになれたら、この世界はもう少し手で掴みやすい形になってくれるのだろうか。」

「こんな自分になるとは思っていなかった。」

「それでも学校に行くことは死に等しかった。」

「毛足の長いカーペットに染み込んだペンキのように、幾重にもわたってぶちまけられ続けた愚かさの染みは消えない。あの時あんなに幸せだったのにと思い起こされる幸せは全て幻想だと知っている。ずっと泣きそうだった。辛かった。寂しかった。幸せだった。この乖離の中にしか自分は存在できなかった。」