不適切にもほどがある

楽しかったー。

こんなにくだらなくてワクワクさせてくれるのはやっぱりクドカンドラマなんだ。

キャストもいつも素晴らしいし、謎にミュージカルでおもしろいし。

河合優実と磯村勇斗が特に好きだった。阿部サダヲも最高にはまり役。れなあも出てて嬉しかった。

そして何より、今の時代への風刺が嫌というほど存分に盛り込まれてて、最高。

下品な言葉も、あんなふうにだったら使える。些細な表現にどれだけ気を遣ったかと思うと、涙ぐましい。

コンプラチェッカーおもしろかったな。

クリーピーの音楽もやはりすごいぜ。

寛容にならなきゃね。

誰が国語を殺すのか

国語力の大切さを、説得力を持って訴えたルポ。

公立小学校の現状は深刻だ。

言葉でコミュニケーションがとれないと、他者との関係に、喜びだって見いだせないかも。

ネットやゲームの世界で飛び交う暴力的な言葉だけで生きていく子どもたちがたくさんいることを思うと、この国の未来が心配になる。

感情労働、という言葉、初めて聞いた。すごく、腑に落ちる表現だと思った。仕事によって感情を奪われているって、ずっと思っていたから。

羽の生えた言葉で、どこまでも飛んでいきたいな。

「人にとって本当に大切なものって不可視なものだと思っています」

「そんな時代の中でしなければならないのは、社会からどう言われようと、自分が好きだと思えることを見つけ出すことだ」

blue giant

映画を見ました。

blue giantって言葉、かっこいいな。

映像がとにかく綺麗で、素敵だった。

全体的に蒼く描かれる東京の街。

特に演奏の場面は、伝え方の発想が自由で、エネルギーが爆発してて、ワクワクして、めくるめくかんじがとてもよかったです。

宝石箱みたいだった。

圧巻の迫力だから、映画館で見たくなる作品。ジャズっていいなってなって、誰かの人生を変えるかもしれない。

久しぶりに、とても真っ直ぐな作品で涙流した。

 

鉄コン筋クリート

松本大洋のマンガ。

シロとクロと宝町。

なんだろう、この人のマンガは奥行きがすごいけど、でもギャグマンガかな。

シロの純粋さと、素朴な疑問がとっても刺さった。

悪魔に取り憑かれたみたいなクロの迫力もすごい。素早いクロの動きが、私には見えてた。

地味に、警察の若者の不感症がツボだった。シロと仲良くなってかわいい。

じっちゃんの存在も泣ける。

客観的には他殺だけど、鈴木が、自殺だっていいきる警察も。

暴力団と警察の関係って、実際のところどうなんだろう。

月と散文

私は又吉直樹という人が大好きなので、エッセイが楽しい。

表紙、松本大洋なんだ。とてもいいな。

自分の中で、無限に会話できる感覚、楽しいな。

好きなこと、やったほうがいいって、思わせてくれる。

考えすぎって言われても、考えることをやめられない。例えそれが、どんなにどうでもいいことだろうと。

「せめて好きなことをやって自由に恥を掻きたい」

「文章を書くという行為を気負いすぎて危うく実力以上のことをやろうとしてしまった」

「そんな時、「俺の好きな子の方が圧倒的に可愛い」という独特の方法で慰めてくれたのは原くんだった」

「悲観してもいいから止まるな」

「お前と旅行に行く本が可哀想やわ。楽しくないやろな」

「表現することに脇役なんてないのだ」

「あの日の僕のように目的地のさらにその先を目指してみようと思う」

「まさか証明写真機が壊れていたということを受け入れられず、その椅子に座ったまま呆然としている男がいるとは誰も思わないだろう」

「半袖孤立おじさん」

「これが好きな僕っていい感じでしょ?という姿勢を見て、とてもダサいなと笑うことはある」

「日本支部もしっかりしなくてはと改めて思った」

「言葉を尽くしても描き切れないような大切な記憶を、暴力的な言葉で片付けられてしまう無念」

「死ぬ気で生きないと、やりたいことの半分も終わらないよ」

「「あの時、あの人に自分の正直な気持ちを伝えていればどうなっていたのだろう?」と考えることがある」

テストカトリポカ

表紙の絵がとてもかっこいい。

本格的な裏社会もの、というような小説は、これまであんまり読んでこなかったかもしれない。

日本にいる南米や中米の人たちのことも。

メキシコのアステカ文明や、心臓外科医が、暴力団の関係、意外性のある組み合わせと縦横無尽な物語の展開と。

パブロとコシモの師弟愛がいいね。

信仰というものの力強さが伝わってくる作品だなと思う。

「賭けだよ。いくら用意周到に計画したところで、どこかで賭けに巻きこまれるのは避けられない。人生ってのはそういうものだろう?」

「泣きわめかずに命を差しだせる奴とは今後に組む価値がある」

「風にはいろんな種類があった。ひろいかぜ、せまいかぜ、まるいかぜ、するどいかぜ、おこるかぜ、わらうかぜ、なくかぜ」

「じかんがゆうひにしずんでいる」

「時間がとうさんといっしょに笑っていた」

パレード

吉田修一の傑作だ。ポップな作品かと思いきや、怒り、に通ずるこわさがある。

登場人物たちの、圧倒的存在感、というか、絶妙にリアルなかんじがとても良い。

軽い感じのやりとりも心地良い。

だけど、みんな、どこか、狂ってる。

誰もが、どこか、演じてる。

それってだれもほんとはここにいないってこと? 

難しい問いである。

「話したいことではなく、話してもいいことだけを話してるから、こうやってうまく暮らせているのだと」

「先輩のパジェロは10km走ってもエンジンが止まることはない」

「俺、あなたのことが好きみたいなんです。この「みたい」っていうのは照れなんです」

「琴ちゃんは恋愛相談のなんたるかを、その基礎の基礎さえ分かってない。恋愛相談で、相手に本当のことを言うなんて許しがたい違反行為だ」

「調子がいい時には、世界一のおふくろだと思うんだ」「ただ調子が悪いと〜俺が世界一の息子になってやんなきゃって、そう思うよ」

「私はふと、「これから嘘をつきますよ」という嘘もあるんだ、と気がついた」

「人から真剣に頼られてる時って、頼られてる方は気づかないんじゃないかな」「その人がどれくらい真剣に、どれくらい必死に自分のことを頼ってるか、そこまでは気づかないでいるんじゃないかな」

「私の好きなタイプは、聖フランチェスコ会のモットーと同じよ」

「ときどき、何が哀しくてそんなに飲むのかと、未来に訊いてみたくなることがある」

「今日から一緒に暮らしましょう、と言いながら、じゃあ元気でね、さようなら、と同時に言ってたような」