吉田修一の傑作だ。ポップな作品かと思いきや、怒り、に通ずるこわさがある。
登場人物たちの、圧倒的存在感、というか、絶妙にリアルなかんじがとても良い。
軽い感じのやりとりも心地良い。
だけど、みんな、どこか、狂ってる。
誰もが、どこか、演じてる。
それってだれもほんとはここにいないってこと?
難しい問いである。
「話したいことではなく、話してもいいことだけを話してるから、こうやってうまく暮らせているのだと」
「先輩のパジェロは10km走ってもエンジンが止まることはない」
「俺、あなたのことが好きみたいなんです。この「みたい」っていうのは照れなんです」
「琴ちゃんは恋愛相談のなんたるかを、その基礎の基礎さえ分かってない。恋愛相談で、相手に本当のことを言うなんて許しがたい違反行為だ」
「調子がいい時には、世界一のおふくろだと思うんだ」「ただ調子が悪いと〜俺が世界一の息子になってやんなきゃって、そう思うよ」
「私はふと、「これから嘘をつきますよ」という嘘もあるんだ、と気がついた」
「人から真剣に頼られてる時って、頼られてる方は気づかないんじゃないかな」「その人がどれくらい真剣に、どれくらい必死に自分のことを頼ってるか、そこまでは気づかないでいるんじゃないかな」
「私の好きなタイプは、聖フランチェスコ会のモットーと同じよ」
「ときどき、何が哀しくてそんなに飲むのかと、未来に訊いてみたくなることがある」
「今日から一緒に暮らしましょう、と言いながら、じゃあ元気でね、さようなら、と同時に言ってたような」