よしもとばななと梶井基次郎

ブログをはじめました。好きなものについて、たくさん書きます。ひとの言葉を借りながら。

日々を過ごす中で、外の様子は刻々と移り変わっていて、いろんな時間にめぐりあう。朝、珍しく早く起きれた時の肌寒い爽快感や、蒸されてるけどなんだか落ち着く熱帯夜。空の色が変わっていく風景を全部見届けたら世界の秘密を知ったような気分になる夕方も、なんで今日なんだって思いながら進む雨の通学も。

いろんな時間があるけれど、どれかひとつを選ぶなら。私は、あたたかなお昼過ぎ。日差しがやわらくて、少し色づいた葉っぱを照らしていたりしたら、すごく良い。こぼれる光に包まれて、とても幸せな気持ちになるから。

私のお気に入りの作家さんのひとりによしもとばななさんがいて。彼女の作品に、「デッドエンドの思い出」という作品があって。秋のお昼過ぎのあたたかな時間に巡り合うと、いつも思い出すのです。人生のどん底にいる主人公が、秋のあたたかな日差しの中で、外の公園でお昼を食べているその瞬間だけは幸せの中にいる。ひとのこころは複雑で、そして単純で。

ひとの絶望と幸福の境目は、ほんとうはあんまりないのかもしれない。梶井基次郎の「檸檬」では、たったひとつの檸檬が主人公の憂鬱をすべて吹っ飛ばしてしまうのだから。

きのうのお昼がちょうど秋のあたたかいお昼だったから、こんなことを書きたくなりました。

 

「人の心の中にどれだけ宝が眠っているか、想像しようとしないひとたちだって、いっぱいいるんだ」(「デッドエンドの思い出」より引用)