人間は忘れる生きものです。

人間は忘れる生きものです。

半年くらい前に、飛行機の中で寝てた時に、隣のガタイの良い外人に、スカートや下着の中に手を入れられてて、恐怖で目が覚めた。
機内は暗くって、私はその知らない手を押し戻した。みんな周りは寝てるようだった。その手は、私の目が覚めたことに気づいてもなお私のももをなでようとする。

ひとにカラダをさわられることはそもそも嫌いで、知らないひとならなおさらだ。ひどい嫌悪感が私を襲っていて、ああ私が悪いのだと思った。飛行機に、タイツも履かず、スカートでのこのこ乗りこんだ私が悪いんだと思った。こういうとき、外に向くはずの怒りは内に内に向かっていって、私はいっそう小さくなる。
テレビで性被害を訴える女のひとの声が聞こえる。
「自分に非があるような気がしてしまうんです。恥ずかしいので、訴えられないんです。」
ああ本当にそうなんだと思った。

この体験は、私のこころに癒えることのない傷を残すのだろうと思った。それほどに、理不尽で、悔しくて、気持ちの悪い出来事だったから。
なのに、今はもう私はその体験をこうして文章にできてしまうほどだ。

人間は忘れる生きものです。