海辺のカフカ

村上春樹の作品は不思議だ。

表面をなぞっているように見えて奥が深くて、きれいなのに気持ち悪くて、つたないようで妖艶だ。

海辺のカフカを読んだ。

「そのほかにどれくらいたくさん、僕の気づかないことや知らないことが世の中にあるのだろう?そう思うと、自分が救いようもなく無力に感じられる。どこまで行っても僕はそんな無力さから逃げきることはできないのだ。」

「僕がほしいのは外からやってくる力を受けて、それに耐えるための強さです。不公平さや不運や悲しみや誤解や無理解ーそういうものごとに静かに耐えていくための強さです。」

「恋をするというのは要するにそういうことなんだ、田村カフカくん。息をのむような素晴らしい思いをするのも君ひとりなら、深い闇の中で行き惑うのも君ひとりだ。君は自分の身体と心でそれに耐えなくてはならない。」

「どうしてもわからないんだ。なぜ誰かを深く愛するということが、その誰かを深く傷つけるというのと同じじゃなくちゃならないのかということがさ。つまりさ、もしそうだとしたら、誰かを深く愛するということに一体どんな意味があるんだ?一体どうしてそんなことが起こらなくちゃいけないんだ?」