まぼろしハワイ

 よしもとばななは、どこかの土地が持つ力、風土みたいなものの気配をありったけの言葉を紡いで伝えてくれる。なんくるないとか、もしもし下北沢とか。

 ハワイは行ったことないけど、いつか行ってみたい。この本は、5年もかかったのだというから、きっとハワイの本質にたどりつくには途方もないけれど。そういうことを、旅先で、少なくとも感じとれるくらいの心持ちでいたいなーと思うのです。いつでも、目の前にある素敵な瞬間が、そこ以外ではありえないのだということとか。見えてるものの奥や、背景には、たくさんの見えないものが詰まってることとか。そういうことが、わかるような生き方をしたいなあと思うのです。

 

「だってママは自殺したのだから。この、美しいはずの世界を捨てて。当時の幼い私が信じていたかった、青空や光やレースみたいに揺れる葉っぱや永遠に続く恋や死なない両親の夢をみんな消し去って。」

「だれかのためにしていることなんか一個もないもの、生きているだけなんだもの。」

「なんで時間は過ぎてしまうんだろう、どうして愛する人はみな逝ってしまうんだろう。私はどうしてそれに対してなにもできないんだろう。自分が死ぬときもこんなにだれかを泣かせるのかな、なんでそんなふうになってるのかわからない。過ぎて行くには美しすぎるこんないろんなことが。」

「あたたかい風と太陽の光と移りゆく時間が変えて行く景色があればなにもいらない。」

「そういうつまんないことでどんどん家族になっていったの。」

「いつでも未来は想像を絶することでいっぱいなのだ。」

「ある夕方、暮れてゆく冬の光を見ていたら、建物の窓ガラスが冷たく光るのを見ていたら、ああ、そうなんだとしみじみと気づいただけだった。」

「僕が奪われた時間の重さを背負っていけ。」

「神様、僕はどうでもいいから、姉さんから僕だけは取り上げないでくださいと、矛盾しているがおもってしまうのだ。」

「若い大介のこの程度の熱情では、姉さんの闇には対抗できない。」

「そうか、靴をはくのにまずひもを結ぶとか、食う前には箸を用意するとか、それが生きてるってことだって、いうことか。」

「でも最高だ、最高の歪みだ、」

「そして僕は思う。たまたま酒を飲んで運転したあの男が、たまたま平和に散歩していた僕の両親を轢いてしまう、その運命の力について。誰にも止められなかったその出来事について。」

「自分にとって特別ではない、あたりまえのことならなんでも手に入る、そんなふうに私は思う。」

「君とふたりきりになったらおしまいだ。」