チョコレート革命

俵万智の歌集。好きな短歌。
又吉の「渦」で、紹介されてて。
短歌がこんなにかっこよくて自由なこと、知らなかった。文字が限られいるから、余計なものがなくなるんだね。わたしもつくってみたいと思ったの。

眠りつつ髪をまさぐる指やさし夢の中でも私を抱くの
日曜はお父さんしている君のため晴れてもいいよ三月の空
優等生と呼ばれて長き年月をかっとばしたき一球がくる
愛することが追いつめることになってゆくバスルームから星が見えるよ
逢うたびに抱かれなくてもいいように一緒に暮らしてみたい七月
簡潔に君が足りぬと思う夜愛とか時間とかではなくて
ゆりかもめゆるゆる走る週末を漂っているただ酔っている
嘘っぽさにむしろやすらぐ夜ありててかてか光るお台場の海
サヨナラの形にススキが手を振って駆け抜けてゆく風の輪唱
蛇行する川には蛇行の理由あり急げばいいってもんじゃないよと
ある日ふと靴屋の前からなくなりしポストについて誰か語ろう
忘れるという知恵を持つこの国の平和、それでも平和を愛す
もう二度と来ないと思う君の部屋腐らせないでねミルク、玉ねぎ
子どもとは何をおいても笑わねば、笑わねばならぬ生き物と知る
「くれてやる!」ぼくは空っぽの箱だから壁に向かって空に向かって
ただ鳥が空を飛ぶようにただぼくは十七歳であることを飛ぶ
肩並べ新宿駅へ向かう時もう少し続け信号の赤
君の好きな曲さえ知らぬ一人が君の新婦となる木の芽どき
東京はつるつるの街カルカッタをふと懐かしく思う日もあり
泥棒猫!古典的なる比喩浴びてよくある話になってゆくのか
焼肉とグラタンが好きという少女よ私はあなたのお父さんが好き