海をあげる

海をあげる、タイトルや装丁からとても素敵な本です。でも、中身は強いメッセージ性に満ちた本。
本屋大賞ノンフィクション部門の受賞スピーチを聞いて、言葉の選び方が非常に慎重で適切で力のある方だと思いました。私も、落ち着いて、自分の言葉で、自分の思いを、まっすぐに届けられるようになりたいと思った。
それと同時に、相手の言葉にいつも全力で耳を傾けられるひとでありたいと思った。切実な言葉たちが飲み込まれてしまうことがないように。

「自分のためにごはんをつくることができるようになれば、どんなに悲しいことがあったときでも、なんとかそれを乗り越えられる。」
「陽子、ふたりのこと許さないでいいよ。っていうか、許そうとしたらいかんよ。あんたが壊れるよ。」
「四年間、何も気づかず、あなたに優しくしていた自分のことを刺してやりたいの。」
「いまならわかる。知らん顔して助けだそうとしてくれたことが。」
「よいバンドは、居ずまいがきれいだよ。真剣さが違うというか。」
「地球が爆発したらいいと言ってよく泣いたし、地球が爆発しないと言ってよく泣いた。」「あのときあったことをぜんぶ、陽子の代わりに、真弓が一生、覚えておいてあげる」
「子どものときみたいになにひとつ傷がないような人生と、優しくしてあげたひとにぼろぼろになるまで騙されて、それでも大人になった人生とどっちがいい?」
「そういう友達と一緒に居ながらひとを大事にするやり方を覚えたら、あなたの窮地に駆けつけてくれる友だちは、あなたが生きているかぎりどんどん増えます。本当です。」
「生きているひとたちが穏やかな気持ちになるために宗教はあるのです。」
「彼女たちがまだ10代の若い母親であることに、彼女たちに苦悩が不均等に分配されていることに、私はずっと怒っている。」
「三月の子どもは歌をうたう。大きくなることを夢見て歌をうたう。大人はみんなでそれを守る。守られていることに気づかれないように、そっとそおっとそばにいて。」
「おせんべいがもらえるから、風花は誘拐される」
「どうしても逃げられなかった理由」
「大人たちはみんな知っている。護岸に囲まれたあの海で、魚やサンゴはゆっくり死に絶えていくしかないことを。」
「切実な話題は、切実すぎて口にすることができなくなる。」
聞く耳を持つものの前でしか言葉は紡がれないということなのだと思います。」
「私もまた、いつか娘に海を渡すのでしょう。
その海には絶望が織り込まれていないようにと、私はそう願っています。」