滑走路

素直で真っ直ぐで、やさしい心の持ち主だなあということが伝わってきた。短歌が、大好きだったんだね。

抑圧されたままでいるなよ ぼくたちは三十一文字で鳥になるのだ
真夜中の暗い部屋からこころからきみはもう一度走り出せばいい
風景画抱えて眠るように ああ あの青空を忘れたくない
レインボーブリッジ渡る真昼間の空のきらきら海のきらきら
消しゴムが丸くなるごと苦労してきっと優しくなってゆくのだ
群衆の一部となっていることを拒否するように本を読みたり
ベランダで沈む太陽観ていたら急に切なくなってしまった
至福とは特に悩みのない日々のことかもしれず食後のココア
遠くにいるきみと握手をするように言葉と言葉交換したり
自転車のペダル漕ぎつつ選択の連続である人生をゆけ
サンタクロースあなたにぼくは逢いたくて逢えず大人になってしまった
東京大空襲走って生きた祖父がいてぼくのいのちがここにあるのだ
牛丼屋頑張っているきみがいてきみの頑張り時給以上だ
われを待つ人が未来にいることを願ってともすひとりの部屋を
耐えがたき感情をいだくここにいるのはぼくだけどぼくなんだけど
きみじゃないきみを探すよ あの街にさよならをしてどこかの街で
この列はなんの列かと思ったらシュークリームの列だったのだ
好きだ 好きだ 好きだ 好きだと伝えても届かない恋ばかりしてきた