愛の夢とか

川上未映子作品。一文が長いね。
この人は、どちらも間違ってないんだけどなあっていう対立を描くのが上手な人だなあと思う。
短編集、はじめて読んだけれど、よかったです。
作品によって、文体やら何やらがまるっきり変わってしまうみたいでおもしろい。

「うまく言葉にできないということは、誰にも共有されないということでもあるのだから。つまりそのよさは今のところ、わたしだけのものということだ。」
「そして、わからないと言いながら、ただこんなふうに淋しくなることだけがいつまでもできて、こんなことをただくりかえして、それで年をとっていつまでもできて、こんなことをただくりかえして、それで年をとっていつまでもこんなふうにひとりきりでおんなじ場所に立ち尽くしたまま、そうやって、わたしはいつまでだって、そうやっていくのだ。」
「上質で、明るい匂いのするものだけを自分のまわりに集めて、それを心の底から楽しんでいるようなそんなふりをもう何年も何年もやり続けてきて、まわりの人間や自分自身にそれを内側からおのずとあふれてくる自信だと思い込ませることに成功していると安心している、わたしの目の前にあらわれたのはそんな女でした。」
「表面的にとりあえず褒めているかぎりは嫌われることもないし波風も立たないと思っていて、そういうのがしみついているのです。そういう人間って多いと思います。」
「でも誰かに飼われるっていうのはそういうこともこみこみなんだってこと、あなたはこれまで一度も考えなかったんですか?」
「死ぬことは、見えなくなること」
「生きているひとをすくうのは、すくえるのは、どうやったって生きてるにんげんでしか、ないんだった。」