夜が明ける

西加奈子の、覚悟が伝わってくるような、魂のこもった作品。
タイトルと、表紙の絵がすごく合っていて、引き寄せられてしまった。
世の中の、いろんな事実、現実を織り交ぜながら、目を背けることなく描き切っていてすごいなあ。
そして、いつもながら、西加奈子の小説は、ある象徴的な出来事によって登場人物達が変化していく様子が絶妙だと思う。いつもある程度長いスパンで描くから、人生のある出来事が後後に与えていく影響、とか。
なんか、今の自分と過去の自分のあまりの隔たりの大きさに驚いてしまうけど、確かに繋がっていて、確かに生きてきたんだよな、っていう感覚を持ちながら読んでいたりします。

あたりまえのように、ひとを助けたい。
苦しいときに、頼ってね、って思うから、頼っていいんだね。

「アキ·マケライネンのことをあいつに教えたのは俺だ。」
「つまり俺はアキを愛しつつ、同時に見下していた。」
「簡単に会い、簡単に繋がる奴らと違って、こうやって「会えないけれど繋がっている」感覚を保つことで、磨かれる場所がある。どんどん透明になるものがある。」
「それは嫉妬だと思っていたが、違った。後になってそれが寂しさだったと気づいた。」
「この瞬きも、この呼吸も、この関節の軋みも、すべて誰かのものなのだ。」
「私たちは、どんなにクズでも、ダメな人間でも、生きてるから、権利があるんじゃないの?」
「それで、自業自得とか、自己責任とか、そんな言葉は、その人が安心して暮らせるようになって、本当に、心から安心して暮らせるようになってから、初めて考えられるんだから。」
「助けてください。」
「その時の俺はまだ、知らなかった。」
「傷だらけの体で、血だらけの体で、自分自身を、そして誰かを傷つけながら、俺たちは呼吸を続ける。この夜は、本当に開けるのだろうか。苛烈に深く、暗い、この夜は。」