宮沢賢治について、池澤夏樹が語っている本。特に、心象スケッチとしての詩について。
詩が、全然読めなくて、すごさのわからない自分にがっかりした。
自然は冷酷ではなくて、無関心。
自然の中にただ身を浸すことが大好きで、そういうことと、社会で生きていくこととの矛盾や苦しさが、少しだけケンジさんと分かり合えるような気がしました。
「不幸を相対的に見る視点がないと言うか、すべての不幸を自分の身に引き受けてしまう性格と言うか。それは美しいのだろうが、しかし成熟した物にはなぞりがたい。」
「どれほど感情を込めた場合でもその感情と作品の間には気品ある距離が保たれる。これは文学一般の原理でもあるから、作品を解析して生の感情を再現しようとする読み方がぼくは好きではない。」
「ケンジさんは遠いものと親しくつきあうのがうまかった。近いところはどちらかというと苦手だった。近いものを遠くするために詩の言葉が紡がれ、登場人物は人から動物になり、全体が夢想的な雰囲気の中に置かれる。」
「人間の社会はしばしば人を傷つけるが、自然はその傷を癒す。」
「宮沢賢治はどこかで、大人になることを拒否していた。世間の知恵を身につける、たとえばお金の値打ちを信じて財産形成を目的に自分の人生を築くとか、あるいは他人と人間関係のネットワークをつくって政治的な力を駆使するとか、そういうふうな成長の仕方を拒んでいた。」