野良猫を尊敬した日

やっぱり大好きな穂村弘のエッセイ。

よんでるこちらがイライラしてきてしまうほど、だめだめな作者。

だめだめ具合で自分を下回ってくれるから、安心して読めるのだ。こんな人いない。

だけど、この人はいつも、心の琴線に触れる言葉を書く。自由で、個人的で、切実で、時に脈絡のない、だけど必然性を感じる言葉たち。永遠に読める。

タイトルがいいね。野良猫は、生涯、なにひとつ所有することなく生きていく。その日の食料さえ確保せずに、身一つで生きていく。

「見てる人の視界の中まで、こちらから、よろよろとよろめきながらでも出て行かないと駄目なのだ。しかも、それを何度も何度も、生きている限り繰り返すしかない。」

「愛してる。突然、そう云ってみたくなる。カモは君を愛してる。」

「太りぎみの人に渡して下さい」

「ジュリーはキムタクじゃないし、ババロアはパンナコッタじゃない。」

「たぶん、心の奥深くで、親しくなるよりも永遠に只のファンでいたいと思っているのだろう。だって、思春期の自分を裏切れないよ。」

「だって、私の云ったことは、全部本当なんだ。本当に本当のことなんだよ。」

「でも、現実は何故かいつも思いがけないタイミングでその厳しさを突きつけてくるのだ。」

「肩書や立場に関係なく、できる人はいつもできる。できない人はいつもできない。僕は根本的に駄目だ、と思った。ここにはいられない、と。」

「でも、いざ現実のアクシデントがあった時、彼女たちは咄嗟に体を動かして、他人のために何かをすることができる。一方、頭でっかちで心ちびの私は、つるんと棒立ちだ。」

「あの時、流れ星を見逃したアキヒコの顔を見て、げらげら笑いながら、こんなことが何度も、そしていつまでも続くような気がしてたけど、そんなことはなかった。ぜんぜんなかった。」