ひさしぶりによしもとばなな読んだら、やっぱりすごかった。
わたし、ほんとにこの人の書く文章好きなんだった。
すてきな表現があふれてる。不思議な説得力がある。やたらめったらいろんな言葉を駆使して、言葉にならないようなことを、言葉にしてしまうよしもとばななの感性が、きらきらした本だなあと思いました。
沖縄に行くまでは、死ねない。
「その無音の中には永遠があった、そういう感じがする。」
「少し退屈で甘く切なくとんちんかんで、永遠に続くかと思われた平和な家族の夢。」
「そういうもう止めることのできない流れを見ていることしかできない哀しさが、店の人のか細くて優しいのにどこか力強い声に交じって幼い私の胸を打った。」
「この世の祈りは、みんな、ほんとうはいるのに見えなくなってしまったある概念のために・・・たとえば母にとっては父の中に見つけた理想の男性像や、父にとってはこんなに気むずかしく考え深くなくてただ勝ち気で陽気だった母の姿や、ほんとうはわかっているのに子供だから子供のふりをして黙って浜辺で遊んでいる私みたいな、そういう存在に捧げられているのだと、私はその時、言葉にはできないながらも感じていた。」
「でもそのおばさんと母との遊び方は、まるで授業か演技のように見えた。」
「深刻になっていいことなんて一個もないよ。」
「甘い果実を育てる力、花を真っ赤に染める力、海の中の魚たちを生かす力、そして風車を回していく力・・・ここにあるいろいろなものに私は力をもらい、吸い上げ、自分の足で踏み出していこうと思った。」
「かけがえのないことはどんどん変化している。」
「なにがあっても私を好きで許しているはずの、家族だった人が、私と別れてもいいと思ったのだ・・・そういう気持ちが消えないままで、ぐずぐずと心の中に、くすぶっていた。」
「なんだかこの国のあちこちに自由のつぶつぶが少なくなっていって、人々は水面でぱくぱくしている金魚みたいに見えた。自由はいつでも、お金だとか時間だとかなにか条件がなければ手に入らないものみたいだった。」
「私たちが考えることやすることの源は、みんな小さいときに世界に触れて得たエネルギーから来ているのだと、こういうときにいつでも思う。」
「お母さんに最後にもらった宝や、夫だった人といっしょうけんめいいっしょに勉強したいろんな宝を持って、また次の世界に行くんだ。次の世界でいちからまた新しく、いろいろなものを見るんだ。
「夢も野心もなく、ただじわじわと、生きているだけで嬉しい・・・。」
「ダメ男、何人知り合えどダメはダメ。」
「がんばるために生まれてきたわけじゃないから。」
「ここだと自分の体と考えとやってることが、ばらばらになりにくい感じがする。」
「その場で思ったことをその場で言わなくて、いつ言うの?」
「体が近くにあるだけでも、ただ嬉しいということなんだ。」
「だから面白いことをたくさんして、逃げ続けるんだ。逃げ続けるしかできない戦いなんだよ。僕のちっぽけな人生を誰にも渡さないんだ。」
「こういうところでだけ、すてきなことが言える人っていっぱいいるんだよね。」
「予想したらなんでもだめになってぐちゃぐちゃになって地面で死んでしまう。」
「限定してはいけないんだ。限定だけが敵だ。だってなにが起こるかほんとうにわからないはずだから。」
「決まりきった価値観を静かに叩き壊したかった。」
「なんでもお互い様なのよ、わかってる?私は売春婦じゃないし、あなたも犯罪者じゃないのよ?」
「こういう変なことが変なふうに起こるのを、そして僕の中のわけのわからない感情がうごめく瞬間を、僕はいつでもどこでも待っている。そしてそれはこしてたまにやってくるから、生きていられる。
明日の僕もそう思うだろう。動いていく世界を聴き続けること以外は、何もできないと。」