輝ける闇

角田光代の影響で、開高健読んでみました。

やはり、文体がしっかりしたこういう作品は、私にとっては読みづらくて、言葉を正確に拾うことはできないのですが、作品の雰囲気だけでも味わいたいと思って読んでみました。

なんだか不思議な現象で、読んでいたら、体が持っていかれそうになるような瞬間があった。

匂いを書きたいというのは、興味深い。

ベトナム戦争博物館に行ったこと、思い出した。

戦争のことなんて、本当は考えたくない。

 

「おなじ岸にいてとなりどうしで昼寝する仲の人びとが、ただ目がさめただけで、たちまち殺しあいをするのである」

「憎しみからでもなく、信念からでもなく、自衛のためでもなく、私はらくらくと引き金をひいてかなたの人物を倒せそうであった。」

「この道具は虚弱だ。殺人犯すら犯せぬ。」

「銃でもナイフでもなく人は殺せた。私が寝るだけで二人の兵が死ぬ。」

「彼が物語の主人公のアメリカ人に名をつけなかったこと、全アメリカ人をそこに代表させたことに私はうたれる。」

「誰かの味方をするには誰かを殺す覚悟をしなければならない。」

「消えないような匂いを書きたいんです。」

「不幸な国だな、チャン」「でもね。記者には天国ですよ」

「彼らがイニシヤティヴをとるまでは友人だ。それからはわれわれは奴隷となる。」

「誰も殺したくないんだ、ぼく」

「人びとは資格も知識も徳もない輩によって、きびしく監視され、検査され、スパイされ、指揮され、法律をつくられ、規制され、枠にはめられ、教育され、説教され、吟味され、評価され、判定され、難詰され、断罪された。取引や売買、物価変動のたびに、書取られ、登録され、調査され、料金をきめられ、捺印され、測定され、税の査定をされ、賦課され、免許され、認可され、許可され、但書をつけられ、説諭され、邪魔され、改善させられ、矯正させられ、訂正された。公共の福祉という口実、全体の利益の名において、利用され、訓練され、強奪され、搾取され、独占され、着服され、税を絞られ、だまされ、盗まれ、そして反抗の兆しでも見せたり、少しでも嘆こうものなら、抑圧され、改心させられ、蔑視され、怒られ、追いつめられ、こづかれ、殴り倒され、武器をとりあげられ、縛られ、投獄され、銃殺され、機関銃で掃射され、裁かれ、罪を宣告され、流刑にされ、生贄とされ、売られ、裏切られ、なおそのうえにもてあそばれ、冷笑され、侮辱され、名誉を汚されたのだった。」

「この子は死ぬ、という思いが胸にきた」

「二頭の水牛がぶつかったら一匹の蚊が死ぬ」

「彼は腰まで惨禍にくわえこまれ、感じ、考え、理解する。けれど、行動しない。」

「わしらに干渉の権利はないんじゃ。わしらは国へ帰るんじゃ」

「人は笑いながら人を殺せるのだ」