昔読んだはずなのに、ちっとも覚えていなかった。表紙の優しい紫が好き。
書き出しから最高だし、睦月とか紺とか、名前がいい。
本当に、江國香織の文章は、ずっと読んでいたくなる。ときどきぎゅっと切なくなる。
きれいなものを、感じていたいな、書いてみたいなと思わせてくれる。
「あいつと結婚するなんて、水を抱くようなものだろう」
「睦月はやさしい。そうしてそれはときどきとてもくるしい。」
「僕がでかけているあいだ、この子は僕を待っていたわけじゃないのだ、と思う。」
「どんなことにも原因と結果がある、と睦月は信じている。」
「私は寝たまま窓をあける」
「でも、僕は男が好きなわけじゃないよ。睦月が好きなんだ」
「時間は流れていくし、人も流れていく。変わらずにはいられないんだよ」
「睦月はまるで、良心という針をたくさん逆立てたハリネズミみたいだ。睦月はほんとうのことを言うのを怖がらない。勿論私はそれが死ぬほどこわくて、言葉なんてほんとのことを言うためのものじゃないと思っているのだ。」
「どうして僕たちのことを、こんな風にこの人たちに報告しなきゃならないんだろう。」