流浪の月

本屋大賞作品、読んでみました。
個人的には、大賞にしてはちょっとだけ読み応えに欠けるかな、と思ったのだけど、淡々とした語り口のせいかもしれないね。
でも、常識とか普通とか、そういうことに対する疑問をコンスタントに投げかけてくる小説で、一読の価値ありだと思いました。

「昔は楽しかったなんて思っちゃいけない。だって今が不幸みたいじゃないか。」

「相手に好かれたいとさえ思わなければ、人間関係に憂いはほとんど生まれない。」

「世間は別に冷たくない。逆に出口のない思いやりで満ちていて、私はもう窒息しそうだ。」

「事実なんてない。出来事にはそれぞれの解釈があるだけだ。」

「ひとりのほうがずっと楽に生きられる。それでも、やっぱりひとりは怖い。神様はどうしてわたしたちをこんなふうに作ったんだろう。」

「これが自由なのか、とふと疑問がよぎった。僕がここにいることにも、いないことにも、なんの意味もない。どこに行こうが、ここに居続けようが、誰も気にしない。」

「わたしと文の関係を表す適切な、世間が納得する名前はなにもない。」

表には出せない真実というのが、世の中にどれほどあるんだろうと思った。
口をつぐむことでしか自分を守れないひとが、世の中にどれほどいるのだろうと。