星か獣になる季節

最果タヒの本、新しく読んだ。
この人の研ぎ澄まされた感覚が好きだ。
だけど、やっぱり、小説家と言うよりは、詩人なんだなと思う。タイトルとあとがきが、いちばんいいと思った。

「ぼくはこんな人にはなりたくなくて、彼が本当はどんな孤独や嫌悪をいだいているかなんて知りたくなくて、森下のことを、ただひたすらにいいやつだと思い込んでいる彼のばかな友人になってみたかった。」

「何を見た、何を見てきた、何を経験してきた、大丈夫だそれだけじゃない、それだけがすべてじゃないこの世界の、ぼくの人生のすべてではない。どこかではだれかがぼくを含んだ人類を笑わそうと生きている。笑いがある。笑わせようとしてくれている。ぼくがそこにまじってもいいこと。それを見てもいいこと。ぼくそれを見ていていい、許されている。笑ったっていい。笑うこともいいんだ。ぼくは。ぼくは泣いている。」

「こんなドーナツみたいな教室、前から知ってるつもりだった。いつだってその空洞の中にはぼくはひとりでいたのだけれど。今は森下がいる。」

「星か獣になる。17歳になると。」

「だからね、私は、森下が捕まったとき、青山が生きていてよかったって、思ったんだよ?」

「だれもがだれかを見下して、それで安心をしていた。自分は違う、と思うことが、何よりもみんなとの大きな共通点だった。」
「青春を軽蔑の季節だと、季節だったと、気付けるのはいつだろうか。どこで、それに気付くんだろう。それは愚かさの象徴で、だからこそ、一番に懐かしい。」

青春は、軽蔑の季節か。本当に、そうだったな。本当に、そうだった。そして、今もまだ抜け出せない。