世界泥棒

すごすぎる。
こんなふうな小説に、だれが正当な評価なんて下すことができるだろう、と思う。
改行も主語もほとんどなしで、圧倒的に濃密な文章。タイトルや表紙も素晴らしい。
会社員をしながら書いたというのは、本当に尊敬に値すると思う。

「わたしたちのまわりにおこるたくさんのことがらのいちいちに、わたしがわるいとか、彼がわるいとか、あるいはだれもわるくないとか、そんなふうに判断をくだしていきたくはないと思った。」
「だれかに他人を許すことを強制するのは傲慢なことだから、軽蔑されると思うよ。」
「そして彼らはただ実際には首を吊ってはいないというだけだった。」
「うん、でも柊って、そんなふうにふつうに最低なところがあるから。」
「わたしは真山くんがよかった。」
「答えなくちゃいけないとしたら、俺、きっと愛せてないって答えるよ。」
「俺が俺じゃないとしたら、あやは傷つくかな」
「世界って情報じゃないでしょう」
「かなしむ必要のないことをむりやりかなしむようなにんげんにならなくってよかったってあいつらは本気で思っているよ」
「そのとき、俺はしんからだめだって思った」「わたしがほんとうにいやなのは、そうやって好きあっていたり思いあっていたりしていたとしても努力しなければ維持できない関係っていうものがあたりまえに生まれてきてしまう理不尽さだったんだ。」
「ほんとうは、俺、世界泥棒なんだ。」
「わたしはこの世界が大好きなんです。」