海を感じる時

中沢けいが、高校生の頃にかいた小説だという。早熟だ。

せまいところで追い込まれていくような感覚がよくわかる。

恋愛と、生活の両立あるいは妥協は、高度な技術だと思う。

文学的な素養がものすごく伝わってきて、ハイレベル。

映画になってたときの主題歌「泣くかもしれない」が、本当に大好きなうた。

 

「妊娠にしろ、その他のことにしろ女は不利だから」

「私が、洋と、いや男と肉体的な関係を保つことは、母の生命の意味までも失わせてしまうものなのだろうか。」

「あの時のお母さんのつらい気持ちを、子供のあんたに覚えておいて欲しかったから」

「中沢くん、作品の言葉はちゃんと吟味しなければいけないんだ。」

「僕はね、君じゃなくともよかったんだ」

「俺ね、どうしても、あんたを大切にしてやれないんだよ。あんたに手が出ちゃうんだ」

「僕が僕に対して持っている信頼を失いたくない。」

「それでも、自分の生活の防衛を主張するのですか。」

「くだらないことをした私は、精神的に血まみれになっていくのがわかった。」

「私もまた、「自分は崇高である」といった確信がなければ、自堕落になっていくしかない、といった生き方しか学んでいなかった。」

「広い広い海のさざ波のくり返しの上へと、私は漂っている。私は漂っていく。漂っていった。」