発行地帯

川上未映子のエッセイ集。

文章を書くことが、大好きだけれどまったく楽しくないって。

とっても信頼できる書き手だなあと思います。

「あゝ、けふまでのわしの一生が、そっくり欺されていたとしてもこの夕映のうつくしさ。」

「十四歳のときに曲線を走るバスから顔を出して、町は白くて、ああもうぜんぶのことに感想をもつのをやめればいいのだつまり生きる生きられる生きてゆく貯めの方法はたったそれだけなのだと気づいたときに、これはとんでもない発見だと思って安心して、そのまま殴られたように眠ったことを思いだす。」

「きっと独りきりをひきずって今もどこか歩いている人がいるんだろうなとわたしはそんなことを思っていて、わたしはあなたを知れないけれど、あなたもわたしを知れないけれど、思ってみても仕方ないけど、そう思って。」

「小説くらい、たくさんお書き、と本当に心底そう思うのだけれど、小説を書くことはまだまだ事件で、わたしは事件を起こすのも目撃するのもあまり得意じゃないみたい。」

「生きてる人間はみんな強い」

「明後日会えるの楽しみにしてるよ。もとても。」