犬のかたちをしているもの

さすが芥川賞作家だ。

セックスがしんどい時のこと、そう感じることで生まれてしまう関係性の歪みみたいなものを、正面切って、でも淡々と描いていてすごい。

奇妙な設定も引き込まれるし、ミナシロさんの存在もよい。あっけらかんとしてる人、ムカつくけど憎めないし、羨ましいけどなりたくない、みたいな。

深く考えることのしんどさも、よく分かる。自分で考え抜いて判断して意思を貫くって、精神力がいるんだ。どんどん、勝手に人生が展開していけばいいのにと思うことがあるね。

 

「そう、ドトールってこういうとこだ。子どもをあげる、あげない、なんて話をするところじゃなくて」

「興味を持つ前にただ風景として受け流していく。ああ、ここは東京だ。これだからわたしは、この街にいられるんだ。」

「ああ半分もないな、って思った。ロクジロウを愛している気持ちの半分もないなって。三浦くんが好きだとか大事だとかおもう気持ちは。」

「しんどいのは本当だろうけど、これもまた彼女の許されようとする技術のひとつであるような気がしたから。」

「可能性にはお金がかかる。たくさん。それから精神力も、たくさん。」

「そんな関係が続けられる男の人が、いるのかな。いるなら、見てみたいっていうか、わたしにも教えてほしいな、ちゃんといたよって。なんか、救われそう」

「なんのためのふりだ、と自分で自分がばかばかしくなる」

「明日からどうしようかな、何を見て、何を聞いて、どうやって生きていこうかな。何をよすがに、何のために、何を言い聞かせていれば、まるで自分のため生きているみたいに、息ができるんだろう。」