葉っぱ

久しぶりの、銀色夏生

写真と言葉の組み合わせが、無限でランダム。

葉っぱのひとつひとつや小鳥のひとつひとつの羽の色の違いまで、見つけられる生き方がしたいと思う気持ちがあるよ。

「希望をもつということは私にも許されたただひとつの愛の告白」

「叱られて気が沈むのはその人が大切だから」

「もうこれまでみたいに平気なふりをしてにこにこするのよそう」

「自分が今おかれている状況を決して客観視せずただもくもくと働く毎日」

「確かに深く君を愛しているのだけどいいかげんに見える形でしかそれをあらわせないんだ」

硝子の塔の殺人

これはすごいなー、なんだか圧倒された。綾辻行人十角館の殺人、とても好きだった身からしたら、著者のミステリーへの熱量に尊敬の念を抱いた。

これまでにあったトリックの豊富さとか、ミステリの歴史とか、そういうものまで踏まえちゃってなんて読みやすいんだろうって感動した。

そして、蒼月夜の憎めないキャラクターが、ワクワク感を倍増させてくれる。はやみねかおる作品を思い出した。

名探偵という職業の矛盾にも切り込んでて、いいね。トリックの陳腐さを後から回収してきたり。メタ的要素を織り交ぜてみたり。

どんだけ緻密にプロット張り巡らせるんですか、どんだけ楽しませてくれるんですか、って思ったよ。

そして夜に読んだらけっこう怖かった。

むらさきのスカートの女

淡々とした語り口の中に潜む狂気が、だんだんと明るみになっていくまでの、手腕がすごい。

気づいたら、ずいぶん遠いところまで来てしまったな、というかんじ。

日常に突如として現れる悪意は、いつもこんなかんじで、あまりに突拍子もないから、いつの間にかずるずると受け入れてしまってる、みたいな。

本当は、決定的に異なる世界を生きているのに、自分のストーリーを生きているだけなのに、まるでずっと前から知り合いだったかのように、お互いにうまいことたち振る舞うのが社会なら、そんなことは無意味だっておもわせてくれる誰かを待ってるだけなのかもしれない。

さっきまでは薔薇だったぼく

最果タヒの詩集。

この人の著作、見かけるとつい手に取ってしまう。

小さなきらきら、鋭い画鋲みたいな一貫したなにかがある。

恋とか、優しさとか。わからなくなってしまう。

「春の、川の上に、光を凍らせて、削ってできた粒を撒いていく仕事をしています」

「死なないように生きたことがぼくはなかった」

「優しそうな人はみんな瀕死なんですよ あなたに親切にすることで最後の力を振り絞り 家に帰るとみんな死んでしまうんです」

 

夜景座生まれ、も読んだ。

「夜はいつも皆殺し」

「ぼくに昔死ねって言ったやつが死んだ」

黄色い家

さすが、川上未映子。おもしろかった。

成長するにつれて、見えてる景色が変わっていくこと。異常に気づかないままおとなになること。

詐欺の裏側なんかも、細かく描かれていて興味深かった。

「このさき、自分がどこで生きることになっても、何歳になっても、どうなっても、彼女のことを忘れることはないだろうと思っていた」

っていう冒頭がもう素敵。

桃子とのこととか、いろんなことの対立を、正義と正義のぶつかり合いを描くのが上手な人だなあと思う。

自分でも気づかないまま、周りからどんどん離れていってしまう強さ。

「正しくないよ、そりゃ正しくはないけど、でも間違ってるわけじゃない」

「金を出すやつは金を出してもらうやつより強い」

「自分で稼いだ金だけが自分の金で、自分を守ってくれるのは誰かの金ではない」

「外からはぜんぜん普通にみえる。でもあいつらはちょっとずつ自分を死なせてんの」「そういうやつらが本気でバカラをやりにくんの。それで、金の奥にいこうとする」

ハンチバック

読みたいと思ってた芥川賞作品。

パンチがあるなあ。

力強すぎてユーモアになるの、すごいなあ。

主人公の目線から見ると、いろいろなことの価値が反転していく感覚がおもしろかった。

生きるために、壊れていく。妊娠して、中絶する。金が、摩擦を遠ざける。

奥の細道

さらっと読んでみたりした。

松島とか、平泉とか、行ったことあるところが出てくると嬉しいし。

旅行記と見せかけて、フィクションなんだな。昔は、命がけの旅立ったんだな。

最近、仏教の教えが自分の中にも根付いてること、わかってしまう。

芭蕉の俳句の普遍性、力強さ。残るべき言葉は、残るんだ。

特にこの2つが好きだった。

「塚も動け我が泣く声は秋の風」

「夏草や兵どもが夢の跡」