西加奈子「i」。
「この世界にはアイが存在しません。」
この言葉に縛られて生きてきた主人公「アイ」の物語。
「サラバ」を読んだ時と同じような感覚になった。小説とか映画とかって、ストーリーの骨組みみたいなものがある程度見通せるものが多いけど、でも西加奈子の小説は、読んでいる時に、未来が見えない。あるのは過去だけで、それを頼りに今現在を生きる登場人物と、一緒になってその人生を生きているような気分になることがあるなーと思う。
「これを許したら、ちゃんと仕事をして、罪に手を染めないで真面目に生きている人たちに対して失礼になるからって。」
「Reading Lolita in Tehran」
「読者よ、どうか私たちの姿を想像していただきたい。そうでなければ、私たちは本当には存在しない。歳月と政治の暴虐に抗して、私たち自身さえ時に想像する勇気がなかった私たちの姿を想像してほしい。もっとも私的な、秘密の瞬間に、人生のごくありふれた場面にいる私たちを、音楽を聴き、恋に落ち、木陰の道を歩いている私たちを、あるいはテヘランで「ロリータ」を読んでいる私たちを。それから今度はそれらすべてを奪われ、地下に追いやられた私たちを想像してほしい。」
この作品を書く前に、西加奈子さんが、インタビューで、女の子同士の好きな気持ちを書きたいって言ってた。
恋愛じゃなくても、かけがえのない「好き」の気持ち。
それから、こんなことも言ってた。作家になったからには、世の中の出来事に対して、目を見開いて向き合っていきたいと思ってるって。
他人の様々な苦しみに対して無視を決めるのではなくて、想像出来たら、少しはまし、かな。