初めて読んでみた。
小樽の文学館にエスキースがいくつか飾られてて興味を持った。
本当に、多才な人だったんだ。
ハードボイルドと言うのは、こういうのを言うのかしら。
文学的にすごく高いレベルの文章で、少し村上龍や中村文則のような要素を感じました。
こんなにも反倫理的な作品を書く人が、都知事にまで上り詰めるということが、なんだか世の中のいびつさをあらわしている気もするけれど。
なんていうか、人の感情に対して過度に反応し過ぎるお人好しには、政治家と言う職業は務まらないのかな、と思ってしまう。
やっぱり、ひと昔前の作家さんには、紙上だけじゃなくて、自らの文学を、人生をかけて体現するような人が多いのかなあと思ってました。
短編いくつか入ってて、「太陽の季節」もよかったけど、「乾いた花」も好きだった。
「この年頃の彼等にあっては、人間の持つ総ての感情は物質化してしまうのだ。」
「彼等の示す友情はいかなる場合にも自分の犠牲を伴うことはなかった。」
「そして更にこの友情を荒々しいまで緻密にして行くのは、その年齢にまかせてとは決して言いきれぬ、彼等の共同して行う狼藉と悪事を通じて結ばれる共犯者の感情だった。」
「彼が通って来た世界の女達は、所詮玄人も素人も、彼が女に求めるべきと信じた夢を一つ一つ壊しただけであった。」
「以来英子は与えずして奪うことのみ決心した。」
「彼にとって大切なことは、自分が一番したいことを、したいように行ったかと言うことだった。何故と言う事に要はなかった。」
「これは英子の彼に対する一番残酷な復讐ではなかったか、彼女は死ぬことによって、竜哉の一番好きだった、いくら叩いても壊れぬ玩具を永久に奪ったのだ。」
「自分に何が起ろうとしているか、克己は知ってもいたし、知りもしなかった。」
「この男は自分の負けることを知らないんだ。」
「生きるって退屈なことだな」
「そうよ。誰が何をいっても、私は私を許してやるわ。」
「少なくともその時、私たちにとって世界は可能なものだった。」
「今の瞬間を捉えておくためにどれほどの勢いで時を追いかけたらいいのかと私は思った。」
「あれもひとつの人生って訳だ。でも結局は、みんな無駄なのかしら。」