そして誰もゆとらなくなった

何も考えないで読める文章、ってあとがきで書いてあったけど、ほんと、ここまでネタに全振りしているエッセイは類をみない気がする。さくらももこ超えしている気もする。

読んでて楽しくて、くだらなくて、声を出して笑えるところがいくつもあった。

そして、基本的に、なんかこの人よりましかもって思わせてくれる朝井リョウの腰の低さ、度量の小ささが大好きです。

小説とのふり幅がすごすぎる。

クリスマスのホールケーキ大作戦、やってみたいなあ。いいないいな。

 

「でも当時の私の自己肯定感は地面を突き破りマントルに到達せんばかりの低下具合だった。自分で自分を取り戻すことがどうしてもできなかったのだ。」

「弛緩したクマ」

「風船の中に仕込む熊は手作りにすべきではないのかという薄気味悪い話し合いを進める仲間たちがこちらを向く。」

「つらい!死にたい!大嫌い!」

「ここぞっていうときにはいっつも、神様が「バーカ!お前の人生、そんなにうまくいくわけねえだろ!」って、我に返らせてくれるんだよな~。」

「過去の私が、本にまつわる話の合間に健康に関する有益な情報を差し込まないよう、あらゆる手を使って当時の自分の行動を阻害するだろう。」

「天才ですみません」

「なんか甘いものとか食べたいなあ」

「私の積年の雑さがついに明確に他人に迷惑をかけ始めているなんて、感慨深かった。」

「そして遂に、私の信頼度が地の底に墜落する出来事が発生する。」

「あと十分ほどですべてを判断する人が来るので、説明はそれからでもいいですか」

「当然のようにどうにもならなかったこと、そしてどうにもならなかった後も日常が滑らかに進行していったあの感覚が、薄気味悪く思い出されるからである。」

「大人の習い事とはこういうものなのだと。」

「どの立場で?」

「七カウント目までを正しく踊れていないと、七カウント目までの時間を真っ当に生きていないと、人は八カウント目で堂々とキメられない。」

「似合わない街にいこう 睨まれて帰りたいな」

「似合わない場所で明確に私を睨んでくれる視線の存在は、どんな形であれ、ありがたいなと感じた。」

「どこでどんな風に生きるにしても、その人がしっくりくる景色の中にいられているのか、それが何よりも大切だ。」