玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ

いいねいいね、鋭いね。
2人の短歌、どっちもおんなじくらい好きだ。
情景がふわっと浮かんでしまうもの。
思い出してしまう、まだなんの責任も負ってなかったような日々。なのに暗くて泣きたくなった日々。
天使を多用するのは、穂村弘の影響なんだろうか。

「体育館の窓が切り取る青空は外で見るより夏だったこと」
「電波ひろえないラジオになりきれば午後の授業はきれいなノイズ」
「KEEP OUTのロープを鳩がくぐるのをなすすべもなく無視するポリス」
「起き抜けのカーテン越しの夕焼けにぎりぎり今日を拾ってしまう」
「担任を街で見かけて担任にしては攻めてるシャツを着ていた」
「横顔が判る位置まで来て見たがまだ別人の線も残った」
「倒れないようにケーキを持ち運ぶとき人間はわずかに天使」

「邦題になるとき消えたTHEのような何かがぼくの日々に足りない」
「この夏を正しい水で満たされるプールの底を雨は打てない」
「ぼくはまたひかりのほうへ走りだすあのかみなりに当たりたくって」
「ガチなバタフライできみが沖へゆくロマンチックを置き去りにして」
「心電図の終わりにぼくが見る海がきれいでありますように」
「目が合っているような気がする月を月の言葉で威嚇している」