辻仁成の短編集。
おとぎ話、というより外国の童話のような、静かで、教訓的な、少し甘ったるいかんじだ。
明日の約束、がいちばん好きだった。
既存の社会に持つ違和感。
自分に嘘をつかないで、生きていきたいですね。
人の瞳の中には、銀河がある。そのことを忘れたくないですね。
「明日という単語がないせいで、約束や期待というものの重要さも失われた」
「ここでは誰もが生まれたときから自分だけの時間を持っているのだ」
「男は個性などという言葉で人と人を区別しなければならなかったかつての世界を未熟だと思った。個性は生まれたときから万人にある」
「族長はどこに行ったのか、と長老の一人に訊ねると、彼はここにいる、ただ見えないだけだ、と返事が戻ってきた」
「在ることと無いこととに大きな違いがない時がある。居ても居なくとも関係のない存在でありながら、確かにそこに居つづけてるものだって、この世界には数限りなくあるのだ」