宮部みゆき作品、久しぶりに読みました。
山本周五郎賞とったやつなんですね。
とても骨太で、しかも借金をはじめ現代の地獄のあまりの深さを教えてくれるような作品。
クレジットカードの怖さもよくわかって、日本ではそういう教育、全然されていないよなって思わされた。
軽い気持ちで踏み外した足は、どこまでも落ちていって、ほんの些細な幸せすら望めなくなる。その孤独は、はかりしれないな。そしてそれは、特別だらしない人に起こるのではなく、誰にでも風向き次第で起こり得る、自業自得で済ませるにはあまりに残酷な事象なのかもしれない。
「きちんと目を開いて生きている」
「駄目な人は、どれだけ好きでも駄目だもん。タモッちゃんはさ、子供のときから好きなことがあって、その好きなことに才能があって、そいで、そこに進むことに邪魔が入らなくってさ、そういうの、いちばんの幸せじゃない」
「覚悟を固めて農薬を飲むとかビルから飛び降りるとか、そういうのだけが自殺じゃなくてね、なんかこう、このまま死んじゃってもいいなあ、というような」
「名前とは、他人から呼ばれ認められることによって存在するものだ。傍らに、新城喬子を理解し、愛し、彼女と離れられない関係にある人間がついていたのなら、彼女は決して、パンクしたタイヤを捨てるように新城喬子という名前を切り離そうとはしなかっただろう。その名前には、愛がついているからだ」
「君たち二人は同類だった」
「死んでてくれ、どうか死んでてくれ、お父さん。」「そのとき初めて、喬子のそういう姿を浅ましいと感じてしまった」
「肘の触れ合う距離に、声の届く範囲に、そういう生活があることを想像できたろうか。」
「しいちゃんは死んでる、もうこの世にはいない。俺、やっと、そう信じることができました」
「ひどいことをする人は、自分がどうしてそういうことをするのか、ちゃんと考えたことがないんだって」
「不公平な運命から逃げようとしていた」
「こちらから何を尋ねるかなどは問題じゃない。俺は、君に会ったら、君の話を聞きたいと思っていたのだった」