東京タワー

若い、男の子達の物語。東京タワーに見守られている。質の高い文学は、贅沢。高潔なまでに江國香織の彩が細部まで満ちていて、幸福だ。


「世の中でいちばんかなしい景色は雨に濡れた東京タワーだ。」
「決めたら、行動で示しなさい。」「頭のよさというのはつまり、行動能力だ。」
「私は私の人生が気に入ってるの。」
「こんなふうに予定が狂うことを、若いころはもっと楽しめたような気がする。」
「捨てるのはこっちだ、と決めている。」
「透には、どこか危ないところがある、と耕二は思う。ああいう大人びた奴に限って、いつまでも子供なのだ、と。」
「別れることに決めている。決めているが、それはまだ、きょうのことではないのだった。」
「幸福と不幸の区別がつかなくなって困惑する。」
「誰も誰かを捨てることなんてできないわ」「能力さえあれば、人間は自由なのだ。」
「たとえいつか別な女と結婚しても、喜美子との肉体関係はうしなえない」
「誰と暮らしていても、私は一緒に生きたい人と一緒に生きる。」「一緒に暮らすことと一緒に生きることは、必ずしも同じじゃない」
「耕二の女関係について、相談にのるつもりはなかった。半分はばかげていると思うからだし、半分は、耕二なら一人で切り抜けると思うからだった。それはつまり、半分の軽視と半分の敬意だ。」
「興味は持てなかったが、常に正直でいるわけにもいかない。」
「本質的なところで嘘をつかずにすむといのは、ひどく楽なことだった。」