ぶらんこ乗り

どうしよう、こんなにも愛おしい小説はほんとにひさしぶりだ。

リーガルリリーのぶらんこという曲が大好きで、もととなった小説、ずっと読んでみたいと思ってた。

すばらしかった。

文章が切なくて、軽やかで、繊細で、ぶらんこみたいにゆらゆらして浮いてるみたいで大好き。

意外と、現実的なところも。

「この世の、私たちにはみえないところを飛び回ってる天使みたいだ、このこ、って」

「弟はそのときもちゃんとこの世にいて、この世のいろんなものと、しっかり手をつないでいたかったんだ。」

「しゃりんのとれたミニカーとみずごけが、そのときはざんねんかいをしてくれた」

「からだがつめたいこころみたいになる」

「まったく、なんてこばこなの!」

「あまりにもむごい世の中から、ぶらんこにのぼってロープを切って自分から落ちてやれ、なんて、あのこが思いついてもふしぎじゃなかった。そう、ちょうどナマケモノが身を守るためやるみたいに。」

「ずたずただ、と私は思った。」

「この、おだやかなふるえを、今晩はじっと味わっていよう、そして朝がくるのを待とう。」

「どうだい。父さんはなんとかうまくやったろう?」

「地球の引力が月をそこにとどめ、木の上のナマケモノを地面に落とす。空から雹を落とす。」

「本気のさよならはいなくなったひとをちょうどいいところへぶら下げる。」

「半分死にかけた私を、この世にしっかり押しとどめるため。命がけの手で私を支え、この最後のおはなしで、私がちゃんと生き返るようにと願いをこめて。」

「たった今私が感じているこのふるえ、弟のところまで伝わんないかな。あのこの胸のなか、ずっと奥にまで。」