誰かを追いかけるストーカーの恋は実らない、みたいな典型的パターンではなくて、ストーカーがきちんと付き合って、でもだんだん理想とは違う部分も見えてきて、それとも向き合いながら、やっぱり別れるっていう流れが、なんだか新鮮だったかな。
人が誰かを好きになる理由なんて、説明できないね。
誰かを想って夢見てるときがいちばん幸せかもね。
エノマタさんの響かなさや、前田の苦しみや、りえぽんの得体の知れなさとかがいい塩梅にスパイスになって、東京での生活が続いていっていいね。
「あたしはねー、誰かを大事にするって、そのひとをなるべく早くあったかくしてあげることのような気がするの」
「いまのところ、わたしはりえぽんの友情にこたえているが、こたえつづける自信はない。むしろなぜこたえなければならないのだろうと思う。」
「どちらか一方が頼るだけなら、友だちとはいえないんじゃないかね」
「ああ、そうだった。前田はいつでも目抜き通りに出る用意のある人間だった」
「エノマタさんがどこまでいってもエノマタさんであるように、わたしもきっと、どこまでいってもわたしなのだ」
「わたしに対する集中力をときどきはうれしく思い、ときどきはなぜわたしなのか、と怪しんだ。ごくたまにだが、ほんとうにわたしで間違いないのかと確認したいような不安が胸をよぎった」
「月のにおいってどんなかねえ」