ブラザー·サンシスター·ムーン

本を、たくさん読んできた。
大体の場合は、図書館に行って、小説のエリアをじーっと眺めて、目にとまったものに手をのばす。

読んだ本の中には、内容を覚えてないものもある。最近は、ストーリー性のない本も好きだから。
だから、たまに、持ち帰った本を開いて、数ページ読み進めてはじめて、自分がその本を既に読んでいることに気づいたりする。
それでも、もっかい読んだりするけどね。

恩田陸の「ブラザー·サンシスター·ムーン」も、そんな感じで2回読んだ。2回目に読んだとき、泳ぐ蛇の描写や、綾音の部屋の描写、箱崎の好きなナタリー·ウッドの描写をなんとなく覚えてる自分がいたから、もっかい読みながら懐かしいようなあたたかい気持ちになった。


「結局、世界は無数の「あいつと私」で成り立っている。私もあの人も、無数の「あいつと私」のひとつであり、しかも決して他の「あいつと私」になることはできない。きっと、そのことは喜ばしいことなんだろう。素敵なことなんだろう。「私だけの」「かけがえのない」ものなんだろう。
だけど、唯一であるということが、時に耐えがたいくらい苦しかったのはなぜなんだろうか」


「あたしも無防備のまま、何も知らない世界に、こうして外の光の中に出ていくんだなあって。もう後戻りはできないんだなって、思ったの。」


「幸せだったら仕事じゃないじゃないか、ただの趣味じゃないか、と」


「私達は、別れるために出会ったのね。」