辻村作品の中でも、ミステリー色の強い一冊だった。
読者が鮮やかに裏切られるような場面が何度かある。
連続殺人事件なんて、まるで本格ミステリー。
だけど、ストーリーのおもしろさに加えて、登場人物のもがきや苦しみを、一般的な感覚として共感できるレベルまで噛み砕いて訴えてくる技術がこの人にはある。
月子、恭司、秋先生。
「僕のメジャースプーン」にも出てくるの嬉しいね。
一番刺さったのはこれかな。
「俺も月子も、恭司と違って生きていくことに関する感覚が多分とても薄い。誰かに依存して、守ってもらう生き方しかしたことのない甘ったれなんだよ。」
ぐさっとくる。
きっと、人間が愛想振りまくのも、媚び売るのも、こういうことなんだろうね。
大事な局面を自分で決められないのも、綺麗事が言えるのもこういうことなんだろうね。
★好きなことば
「なりたいものになるためには、きちんと生きていかなければならない。」
「何だか新種の生き物を見るようだったそうです。」
「人間には誰でも、大好きで泣かせたくない存在が必要なんだって。」
「不幸にならないで」